散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

夏の遊び

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キスをして、沈黙を共にし、陽光を浴びて抱き合い、夜は眠ることさえ忘れて夢中で語り合った。
彼と彼女と“ワンワン”で過ごした、宝石のような日々。

切ない夢から目覚めると泣きたくなる。何もかも捨てたくなる。
たったひと夏の恋が、時計の針を止め、季節はただ無味乾燥に過ぎ去っていく。
幸せの絶頂から絶望の淵へ突き落とされた彼女が背負った十字架。
メークをするのも落とすのも怖い。踊るのもやめるのも怖い。生きるのも死ぬのも怖い。
つま先も心もボロボロになりながら、バレリーナは踊る。

「一度だけ真実のときがくる。自分を取り囲む壁が崩れ、裸で震える自分が見える。一度だけ」
「あなたの体験なの?」
ベルイマンの青春が投影されている。

「意味や幸せなどただの言葉だよ。ただ踊り続けて老いていくだけ」
鏡の自分に、舌を出して微笑みかけてみる。


☆Review

(2016/09/04)