散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

惑星ソラリス

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“鏡”に向かう罪人の意識は、インナースペースに立ち込める濃霧に引き寄せられる。

潜在意識を反射する“海の惑星”では、形而上的領域が物質化して立ち現れる。
彼を、良心の呵責、悔恨に苛む罪の実体は、怨霊の如く、恋慕の情に訴えながら精神を内部崩壊させていく。

呪いは同時に、償いの機会を与える。タルコフスキー映画における神聖なる“水”が、魂の浄化、救済を意味する。
川面に水草が揺らめく冒頭から。半覚醒に誘う165分の映画体験も、記憶の一部に幻影を見る逃避のそのもの。 

“眠っているときは希望も恐怖もなく、苦労も幸福もない。眠りは万人に平等です。共通の財産です。ただ深い眠りはよくない。それは死に似ている”

愛を抱いて、無重力に身を投げ、逃げ込む“ノスタルジア”。不安定な現実を放棄し、“母なる海”へ帰する。


☆Review

(2016/09/07)