散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

狼の挽歌

f:id:eigaseikatsu:20190204030221p:plain

チャールズ・ブロンソンとジル・アイアランドによるラブ&ヘイトの夫婦芝居シリーズの歴史を追走するスタート地点として今作を再見。

改めて印象的なエンニオ・モリコーネのメインテーマと組み合わされるエッジの効いたカット割り。空撮のロングショットからズームイン/アウトの動きまで一つ一つに大胆なカメラワーク。赤と青を主役に原色系が際立つ鮮やかな色彩設計と言い、実はスタイリッシュな画作りに気付かされる。
無駄な音楽は抑制され、車のエンジン音とスナイパーの銃声が鼓膜を揺らし、余韻に残る。
往年の名画のように、主演女優を映すカットのみを幻想的なほど奇麗に撮ることもやぶさかではないダンディズムの眼差しも懐かしく、甘美だ。

ブロンソンの佇まいが醸すハードボイルドに反応出来ないことだけが、今作にジャストミートし得ない要因なのだが、きっと20世紀少年たちは70年代のブロンソンに、現在で言うゴズリングのような色気を感じていたのだろうと想像しておこう。

一匹狼の寡黙な殺し屋。その愛と、その最期。
無音にはじまり、メインテーマが流れてエンドロールを迎えるまでのクライマックスは、狙撃アクションにおける映画的表現の極ではないだろうか。


☆3.5

(2017/4/19)