散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-14から1日間の記事一覧

ネオン・デーモン

“美はすべてでなく唯一”だれも彼も、彼女もまた、美醜による価値判断から逃れる術を持たない。 極彩色に点滅する耽美と露悪の反復に眩暈する。NWR独特の知覚を通して覗かれる倒錯的寓話の、その内面は案外ピュアなもの。先鋭化したピュアがゆえの狂気性を孕…

シークレット・オブ・モンスター

凶暴な音楽使いと重厚かつスタイリッシュに凝られた映像美は本筋を覆い隠すように、明瞭なストーリーテリングを拒んで、何とも居心地の悪い不穏を醸成する。神経を逆撫でる不協和音が「本質」に先立ちその外郭を幾重にもなぞり、核心は最後の最後にやっと触…

パリ、恋人たちの影

息をするように愛を語る男の言葉に浸ってばかりいるようでは、至上の愛に辿り着くことはできない、そりゃそうだ。語られないことや嘘に見出される真実の方が、より雄弁に愛の表と裏を物語る。 ドキュメンタルな愛の記憶にフィクションが介入し、感情と思考、…

ロスト・エモーション

『THX-1138』の模倣が現在でも有効であるどころか、その管理社会ディストピアのイメージは科学技術の発展に伴ってリアリティを増しているのではないかという皮肉。 例えば、ほんの十数年前まで同性愛を「異常性欲」と定義付けるような極東の“共同体”で、恋愛…

美女と野獣

黄金のドレスを脱ぎ払い、白馬に跨り駆け抜ける。プリンセスの主体性。 兎にも角にも、スクリーン内外におけるエマ・ワトソンの存在感が、何百年と語り継がれるおとぎ話の現代性を牽引する。 ☆3.5 (2018/1/11)

レゴバットマン ザ・ムービー

驚くべきことに世界をまるごとレゴ化し、すべての映像的アクションをレゴ化し、レゴブロックにおける創造性からその本質について批評的に描き上げてみせた傑作『LEGO(R)ムービー』。 レゴワールドはそのままに、バットマンという虚構の“ストーリー”を再解釈…

ある天文学者の恋文

告白をすると、すべての映画鑑賞はある一点の挫折を動機としていると言ってしまっていい。それは至って凡庸なある愛と喪失の経験に過ぎないが、同時に、この人生で後にも先にも起こり得ない光と闇の記憶に違いないと確信するもの。 死んでしまった恋人から手…

愛の果てへの旅

スリリングと言うか甘美と言うべきか、構図と音の設計の妙によってこれほどまでに魅了されてしまうものかと唸る他ない。緩急自在なカメラと寡言な被写体との中間地帯を視点は動かされ、固定され、能動的なのか受動的なのかももうわからないまま、紡がれるカ…

スエーデンの城

ピエロの悪戯はその成否にあらず、混沌の導く事の成り行きに微笑みを浮かべる。少し悲しい喜劇を踊る、少し寂しげな小悪魔。なんてアンニュイな美であろうか。 ☆3.8 (2018/1/04)

モール・ラッツ

一つ。ディズニーランドのシンデレラ城の前と、ユニバーサルスタジオのジョーズの前とで、本当にロマンチックなプロポーズはどっちか。 一つ。コミックや映画ばかり見てないで、他にもっとやることがあるだろうという“神様”からの金言を胸に、しかしそれは叶…

ドクター・ストレンジ

光と影の魔術的なメディアは物語る。善と悪は表裏一体に、ヒーローとヴィランはせめぎ合う終わりなきアメコミ的ユニバース。 架空のヒーローがいくら正義を果たそうと、物質世界の数多の軋轢がなくなるわけではないが、しかし彼らの勇姿に救われる魂もある。…

母の残像

死別という事故的なその衝撃。鳴り止むことのない残響。 「ヘッドホンをすると呼吸が響く。だから息を止めると、次は余計に大きくなる」耳を塞げば 生の実感が死の現実を思い出させる。目を閉じれば、忘れ得ぬ瑣末な記憶の断片がこの瞬間に蘇る。 思い出を繰…

2017年の映画生活ベスト10

1. みじかくも美しく燃え“両目を蔽った天使は、飛びたいのなら飛べた。見たいのなら見ることもできた。しかし愛ゆえに、そうすることを選ばなかった” 2. ストップ・メイキング・センス“歌はヒトの咆哮となる” 3. エイプリルの七面鳥“最良の思い出が一つあれ…

君がくれたグッドライフ

シンプルに生きて、シンプルに死んでゆけたらと思う。人生を複雑にする諍いやわだかまりをなくすことは、そう難しいことではないはずなのだ。遅かれ早かれ、死に向かって生き始めたときに気付くことは、大事なこと以外大事じゃないってこと。どうだっていい…