散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ガザの美容室

壁と海に囲まれた“天井なき監獄”、ガザを一軒の閉ざされた美容室に見立て、サイレンや銃撃戦の轟音が鳴り響く、日常が戦時下である彼女たちのリアル、そのカオスと閉塞感を伝える群像劇。

今作から8年後の現在、イスラエルの宣戦布告によりさらなる戦火に覆われ、焦土と化すガザの街並みを目撃する。

万策尽きた挙句のテロリズム、まさに“緩やかな死”へと向かうばかりの悪手。一方、“ガザを地図から消す”とばかりに報復という名の虐殺をはじめる極右政権。
井戸端に集う彼女らに言わせれば「バカな男たち」の、愚かなたたかいごっこが人々の生活を、命を、愛を、いともたやすく奪い去る。

「テレビを消して音楽を」

そんな希望をも象徴的に打ち砕かれる、途方もない憎しみの連鎖が続く。


☆2.9