散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-10から1日間の記事一覧

あなたのママになるために

強き、深き母の愛は、確率論に定められた運命をも狂わせてしまう奇跡を起こし得る。奇跡に導かれる幼き魂は愛を覚え、やがてその愛をすべての母なる者たちに返す。そうやって命は繋がれていく。それが生きるということだ。 母は子を。男は母なる女性たちを。…

ニューヨーク ザ・ギャング・シティ

“ラブ・アンド・ザ・ガン”キス、キス、バン、バン。 ネズミの番いがライオンを狩る。しかしポーンはキングの捨て駒に過ぎない。 新たな年に。新たな人生。新たな結婚 。すべてが新しい、再出発を。92年、ニューヨークのとある一組の「ボニーとクライド」は聖…

サウスランド・テイルズ

WW3が勃発するディストピアに、レジスタンスやポルノスターや記憶を失ったザ・ロックを登場させて「世界の終わり」がどうのと言われても。ひけらかされる妄想に付き合ってはみるものの、ちょっと何言ってるかわかんないっすって言わざるを得ない駄話。伝わら…

旅するジーンズと19歳の旅立ち

友情と名の付くエモーションそれそのものが美だ。清々しく、愛おしく、まだ若い青の景色にちょっぴり憧れもする。 前作『旅するジーンズと16歳の夏』の共演より、本当の親友同士となった4人のグッドガールズたちが自然体に見せる絆が一層眩しい。役者とファ…

ある戦争

ある戦場の風景と、ある生活の風景。ある家族の風景を通して、決して同じであることなどない命の価値が並列される。 戦場のリアリティと法の正義のジレンマにカメラは揺れながら、守るべきものを持つ弱き者たちの葛藤に接近する。世界の反対側とこの日常が地…

ガール・オン・ザ・トレイン

絶望を紛らわせるため。喪失を埋め合わすため。誰もが他人を頼って、言い換えれば他人を利用して、孤独な日々を和らげる。それは相手も同じ。あなたが彼を見ている時、あなたも彼に見られているし、他の誰かに見られてもいる。自己愛という暴力的な欲望の眼…

ジェーン

君と過ごした季節がこの胸を苦しめる。 とある西部の、男純情物語。男はただ一つの“物語”を貫徹する。 愛とロマンスのしもべ。 クライマックスは“皆殺しのメロディ”を撃ち鳴らして。 ☆3.7 (2017/11/09)

ロスト・ボディ

残念ながら、二人の人間の相対するところには必ずや支配の関係性が内在している。誠に残念ながら、あなたのことはほとんど全てお見通し、意のままなのである。 不服ながら、映画に向かい合ってしまえば、手のひらで転がされ、まんまとどんでん返しにも導かれ…

ザ・ギフト

“君が過去を忘れても 過去は君を忘れない” やった方は忘れても、やられた方はいつまでも憶えている。 本当はやった方も完全に忘れ去ったわけではない。思い出そうとしないだけだ。過去の誤ちを背負って生きているか、相変わらずのうのうと分厚い偽善者の仮面…

ドローン・オブ・ウォー

最前線にて双方の兵士に多数の犠牲が強いられるリスクの対称性を以てはじめて成立し得たはずの戦争も今や過去。捨て駒によるテロリズムと返す無人機による空爆に、市民の暮らす生活の場が戦場となる。憎悪は一層膨らみ、復讐の連鎖は終わりが見えない。 こち…

わたしを離さないで

キャリー・マリガンのつぶらな瞳を静かに零れ落ちる一筋の涙。叫びは、怒り。悲しみ。ジェラシーの、悔恨と償いと。愛の体温。 静謐に流れる時間の中に、うねる命の温もりを感じる。じっと見つめ、そっと触れる。耳を澄まして、繊細に揺れ動く情感を捉えよう…

ポカホンタス

“風の絵の具”が吹き抜け、鮮やかに表情が移り変わる大地の風景。テクスチャーを歪ませる表現主義的な映像が、絵の動きそれだけでストーリーを心に訴えかけ、映画や或いはアニメーションそのものの原初的喜びを感じさせる。 一方で、ディズニーアニメや或いは…

007 スペクター

長回しの優雅なカメラワークから始まる銃撃、爆破アクションの緩急、ヘリコプタースタントの空間の上下動。そして流れ込むサム・スミスが書き下ろした大名曲。シリーズ随一の傑作『スカイフォール』を引き継ぐ洗練し尽くされたオープニングに、再び映像表現…

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気

男性社会でダブルマイノリティが生き抜くということ。一人の願いが社会を動かす、同性婚の未来を切り開いたプロテスト。そして年の差カップルの普遍の愛の悲しみ。 それぞれが断片的に描かれる風景は、ジュリアン・ムーア、マイケル・シャノン、スティーヴ・…

高慢と偏見とゾンビ

労働者階級のモンスターであるゾンビが貴族社会を打倒すべく押し寄せる。18世紀末、産業革命に揺れる英国の地で、もう一つの革命が起こったとか起こらなかったとか。 ランド・オブ・ザ・デッド in UK。 ☆3.1(2017/10/28)

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

悪に染まる世界を放っておけず、たった一つの人命も見捨てようとはしない愚直な理想主義が却って悲しみの連鎖を生んでしまう。 強大な力は争いを引き起こし、争いは尊い犠牲を生む。その十字架を背負い、苦悩しながらそれでも宿命の戦いを続ける孤独な、それ…

エンド・オブ・トンネル

途方もない暗闇の出口を明かすのは、新たに出会う愛の温もりや癒しや信頼が繋げる絆であろうが、言い知れぬ喪失を埋め合わせるものは「悲劇のヒーロー」に身を賭して味わわれるスリルであったりもする。 ☆3.5(2017/10/27)

アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン

神が自分に似せて人間を創ったように、人間が自分たちに似せて作った人工知能とあらば、破滅と進化の歴史は繰り返される。 大いなる秩序として人類の滅亡が見通されたところで、片や自然の摂理として、人は種の存続を懸けて戦い続けるのだろう。人知を超えた…

メニルモンタン 2つの秋と3つの冬

コマとコマの間を埋めるモノローグはまるでエッセイに滲み出る行間を読むようで、愛と芸術の国のエスプリに富んだ美しい言葉の抽象世界が実験映画のように、ヌーヴェル・ヴァーグのように、文化系“リビングデッド”の物語を作り直す。まだ“青年”のはずの、「…

シング・ストリート 未来へのうた

目元につくったアザは、ロックスターを模すアイシャドウに。青春の焦燥、渇望、すべての衝動は瑞々しく響き立つ詩の源泉。 音が連なり音楽となり、音楽が重なりバンドサウンドが誕生する瞬間の奇跡。その一回性の刹那を映画に吹き込む。まさに、音楽と映像の…

神様メール

運命と選択肢について、それぞれのロマンティックに優しい眼差しを送り続けるジャコ・ヴァン・ドルマル。彼のユーモアは、ついにその動かざる秩序を根底からひっくり返し、救いの手を差し伸べる。哀しみを包み込むファンタジー、そしてコメディ。 神に謀反を…

ランブルフィッシュ

色、盲ふ陰影の世界。白と黒と、ランブルフィッシュの赤と青。 斜めのカメラに研ぎ澄まされたショットの連続、ポリスのスチュワート・コープランドの小気味好く雄弁なBGMがドラマチックを掻き立てる。その終焉を。 世の中には普通とは違う確度で世界を眺める…

ザ・ウォーカー

読む、読み込むという行いが信ずることへのたった一つの道である。 粉塵が舞うセピアの終末世界をひたすらに歩き続ける“ただの男”の物語に、仄めく神話性を一人牽引するデンゼル・ワシントンという存在感は、光で綴られた書、すなわち映画という新たなる聖典…

GANTZ:O

グロいということはエロいということ。エロティシズムを支えるのは肉体の重量感。重力のもとに生命は宿る。 エロゲー的想像力から、パシリムシンクロ二シティな怪獣プロレスまで。壮観なるフェティッシュアクション。フェティッシュアート。 ☆4.1 (2017/10/1…