散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

Rip Up the Road

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たった3分の刹那に永遠の夢を見る。その瞬間、人生の全てに触れたような恍惚に包まれ、死んでしまってさえ構わないと思う。幸せすぎて。

そんな音楽の魔法を知ってしまったあの頃に、夢中になって聴き漁ったバンドの一つがFoalsだった。

当時のほとんど真っ白な音楽的感性は、「踊れるロック」を標榜する彼らのサウンドに一瞬で魅了された。ロック史に名を残す数々の名盤と同様に、言語を超越した説得力に呑み込まれた。
ロックンロールはダンスミュージックであることを、すべてのロックンロールは、孤独の深淵からのラブソングであることを盲信するに十分な音楽的嗜好に溺れていった。

あれから10年。音楽ビジネスは転換期を迎え、ロックシーンは明らかな衰退期にある現在もなお、音楽を続ける意味を、バンドであり続けることの価値を、第一線に留まり続けた彼らの現在地に聞くドキュメンタリー・フィルム。
そこには、意外なほど無邪気なまでに、(この)バンドじゃなきゃダメなんだという執着を言外に語り、冗談でも「ロックを守る」なんて言ってしまえる愚かさを失わない、ロックスターの純真が映り込む。

カジュアルファッションに身を包み、リュックサックを背負って、雑踏に紛れるただのロックスター。存在自体が語義矛盾をきたしてしまう2019年現在に、それでもそんな音楽を鳴らし続ける。

FOALS FOREVER」

極東の、“最も未来的で時代遅れの国”より。
ロックンロールの再興を願う者より。
彼らの最新作を待ち続ける。


☆3.6