人生最後の言葉が
「愛してる」
だったならば。
それが真実。
真実が僕を裏切ったとしても
それだけが生きた証──。
「終末時計」も人類滅亡のカウントダウンを残り100秒に設定するような、空想と現実が重なりつつあるような時代の只中にある映画において、およそ半世紀前の近未来ディストピアのテンプレート──人口過剰による食糧危機、資源の枯渇に、気候変動。全体主義化する社会に待望されるビッグブラザー──が、いまだ物語を駆動させるのに有効な装置であり続ける。ただし、もはや社会風刺としての側面は持ち得ず、ジャンルムービーの一群として大量生産、大量消費のサイクルに巻き込まれながら陳腐化の一途を辿りながら。
呑気にスクリーンを眺めては、人類の知恵や希望やと、美辞麗句に目を潤ませる我々の言葉もまた陳腐化するばかり。
事の重大さを知っていながら知らないふりをして。未来の子どもたちを犠牲にしながら、特権的な平和を享受している事実からは逃れられない。世界の虚構で愛を叫んでばかりのけもの。
☆3.3