散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-12から1日間の記事一覧

ヒドゥン・フェイス

ゴーンガール。 美女のヌードを見つめる視線に嫌悪感が入り混じる。抱き合う男と女の交わらない視線。鏡に映るその姿に何を見るか。 映画は手を変え品を変え、愛の囚われを表現するのです。 ☆3.7 (2017/12/27)

マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ

熱に浮かされ、結ばれて。冷めれば別れて、行って来い。愛は生活を取っ散らかすだけ。非実用的な行動だ。なのに、どうして繰り返すものか。愛はままならず、愛を免れない人生はプラン通りにいかないものである。 最期は皆に等しく、行って来いで終わる人の一…

ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー

サンタクロースには何ものにも代え難い深い意義がある。寛大な心に、目に見えないものを信じることの尊さである。クリスマスの奇跡は友情や愛を思い出す人々の心にある。大人になっても子どもの心を忘れないとは、そんな奇跡を願い、大切にすることの無垢を…

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス

「メリークリスマス」 憎らしくも愛おしいクリスマス浮かれモードに、苛立ってばかりもいられない。日陰者には日陰者の矜持がある。また来秋の準備に取り掛からねば。 「ハッピーハロウィン!」 ☆2.9 (2017/12/24)

暗闇にベルが鳴る

“ブラック・クリスマス” ジーザスクライスト…… 誰かに優しくしたり、恵まれない人々のために祈りを捧げたりして慈しみの心を思い出すはずの、たった一年に一度の聖夜でさえ、世に犯罪はなくなるどころか場合によっては増える傾向にあるらしい。こんな夜にも…

不思議惑星キン・ザ・ザ

社会主義下における体制批判から、来る資本主義批判から、矛先は全方位的な文明批判に及び、打算的で卑しい人間の本質を心底愚かしく風刺しておきながら、同時に愛らしくも感じさせてしまうとんだシュール。しまいには人間の尊厳にまでも描き及んでしまう。…

9か月

生命の神秘をその身に宿して、その胎動を肌で感じられる母たちと、そばで見守ることしか、あるいはエコー写真に覗き見ることしかできない父たちとの格差。望めば叶いうる人生の紛うことなき主役の座を張ってきたはずの男が、命を継ぐものたちのこの世界では…

そんな彼なら捨てちゃえば?

恋の駆け引き、恋の法則、てやんでえ。恋の自由市場で露骨な弱肉強食と複雑怪奇な心理戦に消耗する現代の恋愛模様に、結ばれてからが本番の愛を語るべくもない。ほとんどが始まる前に終わってしまい、始めることすら止めてしまう。ましてや情報化された人格…

青い麦

若き青春の日々の繊細な心の揺らぎ、寄せては返す狂おしい恋心の、淋しさに、妬ましさに、天にも昇る喜びが、ノスタルジーを喚起するに留まらない詩情豊かな映画芸術の芳醇として、その甘美を観るものに与える。ありやしない、おもいでの夏の初体験。 経験と…

インディアン・ランナー

善意なんてものは恐怖の裏返しに過ぎないのかもしれない。法や倫理への罪の恐れ。あるいは、情けは人の為ならず。保身のための善行で体裁を取り繕う。善とて所詮、何かの目的のために存在する理性的な働き。例えば、家族を守るため。愛する人を失うことへの…

ブレア・ウィッチ

映像表現が画期的だった作品の続編としての進化が、現代的な撮影ガジェットによるアングルの多様化だけというのは寂しいし、あまりにも目まぐるしく切り替わるカットと振り回される画面に目を覆いたくなることもしばしばであったが、やはりPOV方式にしか醸成…

フェンス

強い父の、これは哀れと呼びたい。 夢は見るな。音楽が生きがいがなんだ、現実を見て、手に職をつけろ。よそはよそ、うちにはうちのルールがある。ボスに従え。養ってやってるのは誰だ。好きで飯を食わせてやってるんじゃない。家族を持つ男の“責任”を果たし…

ユージュアル・ネイバー/マッド・マザー 生贄の少年

母性の暴走と、ガールミーツボーイ。囚われの身は少年で、救い出すのは少女。少年の不能と、女の戦いを静観するだけの弱体化した父性。 ☆3.2 (2017/12/16)

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

一枚の写真に広がる空想。空想の産物にもたらされる勇気。想像の翼を広げて、目には見えない異世界と現実の今を行き来する者の異能はイマジネーション。 ファンタジーが武器である。“恵まれし子ら”は創造する、恐怖も可笑しみも悲恋も慈しみも詰まった物語を…

ミーン・ストリート

最新の映画より、古い映画を観るのが好きだ。できれば遠い外国の映画がいい。風や臭いまでまとめて切り取られた当時の街の風景に、時代のそれ、若者のそれを感じられる映画。少しの間タイムスリップして、知り合うはずのない人々に思いを馳せて、自分を重ね…

ふふふん へへへん ぽん! もっといいこときっとある

スポットライトをもっともっと。このステージの主役は他でもない私自身。出会いと別れを繰り返して、“良いこと”も“悪いこと”も経験する飽くなき好奇心と、勇気を。 ネバーエンディングアドベンチャー。 (2017/12/10)

かいじゅうたちのいるところ

悲しくて悲しくて、寂しくて。ざぶりざぶり、押し寄せる感情の荒波にのまれ、たまらず駆け出したぼくの、“かいじゅうたち”は騒ぎ出す。 ただ、ずっとずっと、みんなとこうしていたいだけなのに。みんなみんな変わってく。そんなことが怖くて仕方がない。どん…

クラークス

まずその、無理だ無理だっていう口癖をやめよう。恥や外聞ばかり気にして、少しも枠をはみ出そうとしないくせに、枠の中で不平不満を垂れたところで惨めな人生の何が変わるというの。いや、変わることを恐れているんだな。何でもかんでも人のせい、社会のせ…

ザ・ボーイ 人形少年の館

見ようとするあなたに対し、見られたくない私は抗う術もなく弄ばれる。正体の不確かな存在からの暴力的な視線に抱かれる感情は、恐怖と嫌悪の2つ。常に見られる側の彼女たちの、2つのホラー。 ☆3.4 (2017/12/08)

パッセンジャー

人間ってのは、どうしてそれほどに孤独を恐れるものなのか。独りであろうと二人になろうと、質は変われど孤独は孤独で解消されることはなく、繋がりを持つだけ新たな孤独が生まれてしまうにもかかわらず、幻想を追い求めることに何の意味があるというのだろ…

シチズンフォー スノーデンの暴露

おそらく人類は、恐れの伴う解放感より抑圧された安心感を選びたがる。 ルールを重んじる善良な市民は、そのルール自体が間違っているかもしれないという想像力を放棄する。正攻法で実現し得ない正義を果たすために、法を犯すことは手段としてあり得るという…

リリーのすべて

どこを切り取っても美しい、ある愛の風景にとめどなく涙は溢れる。 見つめ合う二人の、二人で一つの愛の追求は、美の共作。その本義である自由と解放を描き上げる。 ある芸術家たちの、愛の肖像。 ☆4.4 (2017/12/01)

ツイン・ピークス The Return

もう劇場映画を撮るモチベーションにないと語ったリンチが、クリエイティブ面を完全にコントロールして完遂させたテレビドラマは、やはりクライマックスに向けてカタルシスを昇華させる映画的な喜びに満ちた18時間の大長編であった。 撮り溜めた断片を繋いだ…

父の秘密

全くもって自明であるはずの、人間の愚かしさ、惨たらしさの再現。為す術なく、儘ならない人の世が反復される。 “光”なきあとの陰に小さくか弱く点滅する残光をも、暴力という深い闇が覆ってしまう不条理。ことの一部始終をただ冷徹に眺めるフィックスのカメ…

パロアルト・ストーリー

思春期の悩みが複雑だなんてことは別になくてね。そのシンプル過ぎる答えの途方もない哀しみに初めて触れて、ちょっと呆然としているだけさ。 突然、泣き出したり叫んでみたりするのは、確かにどうかしてると思うけど、理由もなくそうするわけでもなくてね。…

神様なんかくそくらえ

『哀しみの街かど』に同じ、ニューヨークの地べたを転がる恍惚の哀しみへのクローズアップ。 ヒロインの実体験を通してよりドキュメンタルに、歪なほどけたたましく美しくもある電子音楽がよりフィクショナルに。クソドラマチックな刹那は切り取られる。 そ…