散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

青い麦

f:id:eigaseikatsu:20190212191904p:plain

若き青春の日々の繊細な心の揺らぎ、寄せては返す狂おしい恋心の、淋しさに、妬ましさに、天にも昇る喜びが、ノスタルジーを喚起するに留まらない詩情豊かな映画芸術の芳醇として、その甘美を観るものに与える。
ありやしない、おもいでの夏の初体験。

経験とは喪失の、ひと夏の成長の一編。

ひと夏と一夜が過ぎた頃、潮が引くように、変わらないはずの想いが静かに消えてゆくのがわかる。
ふさいだり、はしゃいだり、今の今まで恋をしていたはずなのに。
こんな風に、愛してるの言葉を無邪気に確かめ合って過ごす幸福な日々はもうやってこないんだって思う。

夏の終わり。
愛したくても愛せない哀しみを覚えて、私たちは変わってしまう。思い出だけを手にして。


☆4.0

(2017/12/19)