散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ワンダーストラック

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時の流れが人々を分かち、また繋いでもいる。そのことを語りうる時間の芸術、映画なのだと──。

映画は映るものすべてに時を与え、時の流れに記憶は刻まれていく。記憶は被写体のそれであり、観客のそれでもある。スクリーンの向こう側で交差する記憶と記憶にドラマを見出す、私の記憶と映画の記憶。
時間を縮めたり伸ばしたり、折り畳んだりして暗闇に瞬く一閃の奇跡が……物語が、心の奥底に消え去った記憶を照らし、甦らせる。

人々が行き交い、記憶の重なり合う街に歴史は刻まれている。歴史を頼りに人々は物語を紡ぐ。

自分は何者でどこから来たのか。そんな普遍の問いが童心を襲い、暗闇にたった一人閉じ込められたとき。
暗いドブの中から空を眺めるとき。
僕らは同じ空の下、同じ物語で繋がっていられますようにと、“星”に願いを──。

人生とは独りぼっちの“宇宙の旅”ならば、映画に束の間のランデヴーを夢見るのだと。


☆3.5

(2018/12/24)