散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

がんばれ、リアム

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好きなものを何でもかんでもランキングしようとする“リスト的思考”には、当然、悪い出来事も年表化して網羅しておこうとする記憶術が備わっている。
ある時代のある地域を物語の舞台に選んだなら、歴史に埋もれた市井のリアリズムを描かないことには主義に反するはず。たとえそれが、悲劇を創造することになってしまうとしてもである。

1930年代、イギリスはリバプール世界恐慌、宗教的抑圧、ファシズムの台頭と、子どもたちに覆いかぶさる闇は深い。
しかし、だからこそ、暗い現実に差す虚構の光は美しく尊い。映画のなせるわざである。

いつの時代も大人の罪の罰を負わされる、声なき子どもたちへ。『ハイ・フィデリティ』のスティーヴン・フリアーズが贈る応援歌。

いい歌は語りであり、語りとは音楽的に構築されるものである。
小説にしても漫画にしても、映画にしても、物語を響かせるリズムが大切なのである。
その点で、今作の映像表現は卓越して音楽的なものであり、始終、途切れることのない映画的快楽が胸を躍らせ、心を開かせる。
そして。忘れ得ぬラストシーン、慈愛に溢れる少年と少女の横顔は刻まれるのである。


☆4.1

(2018/04/26)