散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-17から1日間の記事一覧

ルーキー・ハウス・ガール

雪山の頂に立って朝日を浴び、そこから一気に新雪の斜面を滑り降りる。あっという間に過ぎる一日に一度きりの、彼女にとっては人生で初めてのそのライディングに得られる生の実感とは、君のキミらしさを存分に発揮させる解放感。母なる山が君の心と体のすべ…

死への逃避行

“殺人そのものは語る舌を持たないが、何かが代わりに訴える”亡きものを重ねる物語は虚構に過ぎないが、その眼差しには愛が存在する。 全部、ウソ。愛してたことだけが本当のこと。 なあに、平凡な男の哀しいひとりごと。慰めの言葉をクロスワードのように当…

すべて彼女のために/ラスト3デイズ

この愛のために撃て。法よりも上位にある正義の、そのさらに外側にある愛のために。彼女のためならどんな悪にも手を染めよう。 それは、平凡な男の哀しいロマンティック。拒絶されて然るべき愛の幻影。残酷にも、運命とは願い叶えるものではない。悲劇を受け…

歓びの毒牙(きば)

ダリオ・アルジェントの監督デビュー作は、映像こそが映画の主役であることを再認識するサスペンスの佳作。物語や演技などのディテールは二の次にしても、巧妙且つこけおどし的なカメラワークにまんまと翻弄され、まさに“牧歌的なのに寒気のする”音楽は挿し…

ブリングリング

虚飾にまみれ、毒される少女たちの空虚さが恐ろしいほどに。憧憬や承認欲求と言い表されるはずの思春期における鬱屈した感情の内部にも、葛藤の痕跡は見受けられない。したがって、この映画で人間ドラマ然としたエモーションが高まることはないが、少女たち…

コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団

コンビニ店員のバディムービーということで、『クラークス』の精神的続編で原点回帰でも図ったのかと思いきや、まさかあの奇天烈な『Mr.タスク』と世界観を同じくするスピンオフ作品だったとは。そういえば、ダルそうに客対応するイカした女子高生2人組いた…

レッド・ステイト

一度観た映画については全てのカットを記憶していたと言ってもいいほど鮮明に焼き付いていたはずのものが、いつの間にかすっかり忘れてしまっていることに気付かされるこの頃。一定の本数を上限に、記憶はまるで上書き保存されてるみたい。そんなシネフィル…

ヒットマンズ・レクイエム

鳥瞰すれば、たった一つや二つの小さな黒い影が消えゆくだけの取るに足らない道理のこと。それをわざわざブルージュという詩的な街を舞台に、クソ軽妙なダイアローグやクソ美しいピアノの旋律や、クソシャレオツなアート映画の“パスティーシュ”は紡がれ、フ…

エイプリル・フール

そして誰もいなくなった…… Ahhhhhhhh! ……なんちゃって。 HAHAHAHA! 連日連夜、“恐怖とスリルの忘れ得ぬ一夜”を求める映画狂のみなさんへ。開けてびっくり玉手箱、笑えや叫べの最狂絶叫計画をお試しあれ。 ☆3.0 (2018/4/01)

ベアリー・リーサル

『恋のからさわぎ』『ミーン・ガールズ』『ブレックファスト・クラブ』 みんな大好き学園ムービーも数あれど、美男美女の胸キュン幻想に耽る類のものとは一線を画しておきたい青春映画のあれこれ。美女と野獣でもない、ギークボーイや“NEOかわいい”女の子た…

ゴッド・オブ・ウォー 導かれし勇者たち

どぎついゴア描写や醸成される不穏は確かにジャンルムービー的なるものを基調とするが、例えば半世紀も前の名作群と相通ずるような神性を帯びた光源を目の当たりにしているという気がしないでもない。昨今のメジャー大作には生まれ得ない、まるで異質な情調。…

セルピコ

法を尊ぶべき警察官やあるいは政治家が不正を働き、その権力的な地位に恋々としがみつくような社会は確実におかしくなっていく。規範となるべき存在が象徴的価値を示せないどころか、嘘や詭弁、隠蔽でもってして我欲に走ることを是認するような社会で、腐敗…

ハーフネルソン

遠くを見つめる寂しげな眼をして。口角を上げて作るそのニヒルな笑みが、孤独な人間の、愛しみのナルシシスティックをあまりにも雄弁に物語るのだ。もうかれこれ10作以上、ライアン・ゴズリングのフィルモグラフィーが自分のクロニクルに深く刻まれている。…

ジェリーフィッシュ

そういえば、子どもの頃に海で溺れかけたことを思い出す。西瓜のビーチーボールがぷかぷかと沖へ流れていくのを浮き輪もつけずにどこまでも追いかけて、気がつけば足のつかない深くて濃い色の海にぽつんと一人。近くに大人の人は誰もいなくて、もしかしたら…

ラヴレース

MeTooムーブメントの広がる新たな変革の時代に見る、これも一つの、勇気と誇りの告発の映画。かつての性革命のシンボルにおける、一人の女性の皮肉な運命について。公然と流布される史実の裏にあった真実を伝えるべく、映画は前半と後半とでまるで違う表情を…