散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ハーフネルソン

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遠くを見つめる寂しげな眼をして。口角を上げて作るそのニヒルな笑みが、孤独な人間の、愛しみのナルシシスティックをあまりにも雄弁に物語るのだ。
もうかれこれ10作以上、ライアン・ゴズリングフィルモグラフィーが自分のクロニクルに深く刻まれている。
映画に救われる人生において、これからも未来は共にあると言って過言でないほど、共感と信頼を覚える特別な役者である。

ひたすらに今を生きることを迫られる現実に拮抗する虚構の主人公を彼らに託して、夜な夜な自問自答を繰り返す日々。
自己矛盾に押し潰されそうになりながらも、その苦悩こそが原動力となって、人は変わることができる。
変わり続けるものだけが不変であり続けることができる。
二律背反の真理を目に焼き付けて、自らの存在理由を再確認すれば、一筋の涙を転換点に止揚するジンテーゼをもって新しい一日は始まる。

太陽は昇り、そしてまた沈んでいく。
夜明け前が一番暗く、しかし明けない夜もない。
現実からの逃走と復帰を繰り返して、やっとまともに呼吸ができる。


☆3.9

(2018/3/26)