散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ブリングリング

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虚飾にまみれ、毒される少女たちの空虚さが恐ろしいほどに。憧憬や承認欲求と言い表されるはずの思春期における鬱屈した感情の内部にも、葛藤の痕跡は見受けられない。
したがって、この映画で人間ドラマ然としたエモーションが高まることはないが、少女たちが重ねる非行とは矛盾するように、対位的な、“キラキラ”の柔らかな光や開放感に包まれる構図によってその映像表現は強度を保っていく。そして提起される現代性にただただ虚しさが募る。

ガーリーカルチャーの騎手として、今や時代を代表する映画監督に違いないソフィア・コッポラではあるが、やや浮世離れした彼女の作家性にあって、もしかしたら今作ほど世情を捉え、普遍性を帯びた作品はなかったのではないだろうか。
登場人物に全く共感できない、あるいは絶対にしたくないという誰もが抱くであろう強い嫌悪感を映し鏡として。


☆3.7

(2018/4/04)