散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

レッド・ステイト

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一度観た映画については全てのカットを記憶していたと言ってもいいほど鮮明に焼き付いていたはずのものが、いつの間にかすっかり忘れてしまっていることに気付かされるこの頃。一定の本数を上限に、記憶はまるで上書き保存されてるみたい。そんなシネフィルあるあるは……あるはずなかろうか。
まぁ「観ていない状態には戻れない」という不可逆性を超えて、再び新鮮な気持ちで同じ作品に出会えることで見えてくるものもあるのだから、気に病んでばかりいるわけでもないのだけれど。
映画はタイミングだから。

そんな、まさか忘却の一本であった今作『レッド・ステイト』にも、初見時とはまるで違う感想を持つ。
赤い州”が意味するところ、共和党支持を挑発するブラックな風刺ネタであったことは当時の自分には分かり得なかったこと。
福音派ティーパーティなど、想像を超えるアメリカの病理。ごく普通に、平穏な日常に入り込んでいるカルトの存在。ヘイトクライムテロリズムのリアル。一方で当局の横暴についても。
最低限、社会の常識を知った上で観る今作は、ただの予測不能ジェットコースタームービーではなく、その臨場感が全然違ってくる。結構笑えない、暗い気持ちになってしまった。

「人は権利をかさに暴走をはじめる。だが何も考えず、単純に信じる者はその上を行く」

そうだ、サタニストになろう。


☆3.2

(2018/4/02)