散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

アントニー・ジマー

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妻に捨てられ、己を見つめ直す傷心旅行に出発する列車で、向かいの席に美女が座る。
恋は、落ちてしまうもの。
そりゃ、うますぎる話に裏があることぐらい勘付いてはいるが、ソフィー・マルソーに誘われて、抗える男などいるだろうか。この出会いを運命のものとしたい。

ファム・ファタール。待望の、巻き込まれ型サスペンス。

失うものなど何もないシングルマンは、命だって捧げられる。
全てを投げ打って愛したって、美しいその人にはまた別の愛する人がいるもんだと相場は決まっているが、それでもいい。
騙されていたとしても。一夜の、たった一度のキスは、その代償に十分値するのだ。
愛する女性の眼前で、ヒーローを演じ切った最期なら、そりゃ男の本望じゃないか。

ちがうか。そうか。映画の見すぎ。推理小説の読みすぎ。
ぜんぶ、芝居さ。


☆4.2

(2017/5/26)