散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-16から1日間の記事一覧

世界一キライなあなたに

死にたいと願うひとを、死なせたくないひとがいる。もうここで完結しようとする物語を、無理にでも続けさせようとするひとがいる。本当に自分勝手なのはどっちなんだろうか。だれが彼の苦しみを理解できる。希望がないのは死だ。だれが「死を生き続けろ」な…

マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり

はじめましての男女がロンドンの街を散策しながら、恋人までのディスタンスを測る“デート・ムービー”。 阿吽の呼吸で会話が進みだしたら。誰にも言えない秘密を打ち明け合ったら。激しい罵り合いも痴話喧嘩に見えてきたら。二人だけの合言葉で微笑み合ったら…

ファミリーズ・シークレット 秘密を抱えた家族

ありたい姿、あるべき姿と実際に今ある姿とのギャップに秘密は生まれる。秘密を隠すためのウソは、いつか真実が露呈するときに愛に帰結するものであるのなら、それは許されるべきウソなんだろう。ウソは方便。目的は人を出し抜くことじゃなくて、大切なもの…

悦子のエロいい話 あるいは愛でいっぱいの海

どの映画も見る価値があるという言葉を反芻する、まさしく一映画作品に間違いなかった。人間の不格好とそこにある凡なる風景をスケッチする視座の確かさと、美しさ。 「世の中で一番美しいことは、すべてのものに愛情を持つことです」 愛とセックスのファン…

柔らかい殻

黄金の小麦畑と空の青のカンバスに、無垢は残酷と、愛は死とを渾然一体に描きこまれる美しき悪夢。ざわめきを呼ぶオーケストラの調べが場面転換を牽引して、あるいはセンチメンタルな映像美に身は任せられる。暖かな陽が差し、レースのカーテンは風に揺られ…

ハウリング

エポックな特殊メイクはもちろんのこと白眉であるが、そればかりではなく、恐怖を煽るホラー映画である以上に映画としてとても美しい。 “理性と本能”、意識と無意識の双方に喚起するクラシカルな怪奇映画に通底する官能性。抑圧された内なる“獣性”をブラウン…

見えない恐怖

見えないことが恐怖なのは、昼夜を問わず邪悪がそこらじゅうに潜んでいるから。それは悪魔でもなんでもなく、人間の恐怖。見えない恐怖の疑心暗鬼は、目には見えない差別や不寛容を蔓延させて、無闇な悪意の種を蒔く。 顔のない悪意はなにも盲目の女性だけに…

ナイスガイズ!

# MOOD ロサンゼルスの夜景に浮かぶネオンタイトル。レトロポップ、ファンキーディスコ。ビンビン、ノリノリのこのムード。ターコイズブルーはちなみに私のラッキーカラー。 延々と浸っていたい懐古主義をかき回すミステリーと、ある一発の銃声。性と死…

シェフとギャルソン、リストランテの夜

賑やかな晩餐会が終わって一転閑散とする物悲しさから、日が昇り、小鳥のさえずりが聞こえる朝を迎える、わずか3カットの幕切れに凝縮された美の豊かさを味わえるのもある種の特権なんだと思う。この至福、染み入る余韻。胸の奥の方をじんわり刺激して、ほん…

人生タクシー

『オフサイド・ガールズ』から10年強、同じ中東諸国でいうと、サウジアラビアで女性のサッカー観戦が一足先に解禁された。イランもその流れにあるという報道もあるが、 果たして実現する日はいつになるだろうか。 車窓から街の風景を眺めるだけでは気が付か…

サタデー・ナイト・フィーバー

ウソだらけのこの世界で、夢も希望も見当たらないこの町で、こんな寂しいロンリーデイズで。週に一度さし込む一条の光は、ダンスホールのミラーボールのその光と、途切れることなく鳴り響くディスコ・ミュージック。未来はいつも今夜 。踊ることが人生で、一…

ゾンビスクール!

『ソウ』×『glee/グリー』の脚本家によるスクールムービーは、ゴア描写は控えめに安心安全ポップなホラーながら、不謹慎の一線は踏み越えまくるブラックな笑いが散りばめられたコメディとのハイブリッド。まさにゾンビコメディのトレンドに沿った取るに足ら…

ツールボックス・マーダー

トビー・フーパー監督作品。まったく、厭な映画である。 何が悲しくて、美女は野獣に惨殺される悪夢を繰り返し見せつけられねばならないのか、なかなかどうしてわかりかねる。残忍な殺人鬼へのユーモラスな眼差しも然りだ。 映画であるという大前提の中にあ…

恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ

倒錯のサタニズム。 物書きの肥大する妄想は、起こり得る災厄の点と点を線で結びつけてオカルティズムになだれ込む。神の強権に対抗するはずの眼力は顛倒し、世に恐怖と悲しみの混沌を撒き散らすだけの怪物と成り果てる。 「幻想こそが我が友だ」 『デッドゾ…

シャンプー台のむこうに

気品、巧妙さ、独創性あるいは社会性……ヘアースタイルのひとつとってもその美は日々判定されるもの。その佇まいから嘘偽りのない美学が滲み出る頃に、私は私の人生のチャンピオンだ。 何にしたって、一番大事なことは、“スタイル入ってる”かどうかということ…

ルーヴルの怪人

『ラ・ブーム』よろしく、スポットライトはダンスホールの一点に注がれ、一人の美女に目を奪われる。が、今宵の彼女は、古代エジプトはミイラの魂に乗り移られた身。ソフィー・マルソーが怪人を演じているのか、怪人がソフィー・マルソーを演じているのか。…

デッド・フライト

それほど感動するのも億劫な季節。心の安寧をもたらす、ハードロック&ゾンビ。そして夜は明け、リビングデッドの一日は始まる。 ☆2.9 (2018/3/01)