散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-01-20から1日間の記事一覧

夜顔

38年越しの続編と呼ぶには正統に欠ける。同一キャストで続投のミシェル・ピコリとパリの街が辛うじて『昼顔』の世界を思い出させる程で、38年後を別人が別人の視点を使って描いたスピンオフの趣き。第三者たちによる前作への批評。他人の口が語る過去につい…

ウイークエンド

「音楽には2種類ある人が聴くか聴かないかモーツァルトは前者人が聴かない音楽といえば深刻な“現代音楽”真の現代音楽はモーツァルトの和音に基づいているダリオ・モレノもビートルズもストーンズもモーツァルトに基づいているだが深刻な一派は別の道を模索し…

イン・ザ・スープ

豪胆でイリーガルな男。ひ弱な優男にとってそれは天敵だ。一度目を付けられると最後、主導権が返ってくることはない。彼のルールで事は進み、悪道へ引き込まれる。うんざりしながらも断ち切れないのは、心の隅に隠せない憧れ。誰しも、“僕の映画のスター”を…

ローリング・サンダー

感情亡き復讐劇。狂気に曝されたベトナム帰還兵に、帰る場所はない。 『タクシードライバー』のポール・シュレイダー脚本。 ☆3.3 (2016/03/30)

ソハの地下水道

冒頭から数分、主人公ソハを演じる俳優の顔を見極められず、話を見失いかけてしまった。というのは、ホロコーストの時代にユダヤ人を匿った男の、実話を基にした映画。その予備知識だけで観始めたものだから、まさか空き巣で日銭を稼ぎ、ナチスの協力者と近…

ファンタスティック・フォー

自意識の肥大と暴走について描いた『クロニクル』に引き続き、ギークの承認欲求にスポットを当てるジョシュ・トランクの作家性は明快。それがスーパーヒーロー映画に巧く持ち込まれているかと言うと、別の話。 天才青年とその仲間たちのサークル活動が世界の…

泳ぐひと

「チームに入らず自由であれ、自分のキャプテンになれ」 “他とは違う特別な私”にアイデンティティーを保ってきた。地道に歩を進めることを拒否し、社会の波を泳ぐように生きてきた。見たくないものは見ないように。認めたくないものは否定して。そうすれば、…

Hotel ホテル

ホテルで働き始めた若い女、同僚の冷たい視線、裏手に広がる雑木林と魔女の伝説、そして失踪した元従業員の謎。これらを配置し、ミヒャエル・ハネケを彷彿とするとも言えなくもない(実際には直接的な影響下にあったわけではないそう)、何とも言い難い不穏…

Lovely Rita ラブリー・リタ

女性作家ジェシカ・ハウスナーのズームを多用するカメラは、人物の言動を追うように動き、あくまで傍観者の立場を譲らない。鬱屈した思春期を過ごすリタの表情も多くは語らず、出来事が淡々と映し出されていく。 同名タイトルの楽曲、ビートルズの「ラブリー…

メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮

暗闇に漂うゾンビの影……まさかのジャンルチェンジではじまる笑撃の冒頭。当然、人も走ればゾンビも走る。その後登場するクリーチャーは、なかなか気持ち悪くて良い。ただ、YA映画の体裁を保つ限り、例えばゴア描写が有り得ない上でのゾンビとの追いかけっこ…

リピーテッド

「共に生きるか、共に死ぬか」のような二者択一を迫る男の言う愛も愛のうち。与えず、奪うだけの愛。 ☆3.2 (2016/03/24)

MEMORIES

日本映画界が失った才能、今敏が脚本で参加している『彼女の想いで』は、アイデアの所在は正確に判断できないものの、記憶と現実が入り混じる世界観と、映画オマージュは彼のタッチ。『惑星ソラリス』は無関係ではないだろうと見た。 得体の知れない恐怖と、…

トイ・ストーリー 謎の恐竜ワールド

自覚的に役を演じることは誰かのためであり、居場所を獲得することでもある。己を知ることは、一つ成長すること。とは、本シリーズの原点。 (2016/03/23)

トイ・ストーリー・オブ・テラー!

ホラー映画の雛型をガイドに、セルフパロディの趣きで本シリーズのエッセンスを申し分なく詰め込んだ20分の中編。今作の主人公ジェシーの克服すべきトラウマが閉所恐怖症という人間味もいい塩梅。何より、今作の価値は、持ち主がアンディから確かにボニーへ…

ルルドの泉で

ほぼ全編にわたるフィックス、からのパン、ズームインといった無機的なカメラワークは、祈りという人間特有の現象への観察、記録映像のようなドキュメント性を感じさせる。主観を極力排除した俯瞰の構成は、あるいは神の視点。故に、起こる奇蹟の真偽、その…

エターナル・サンシャイン

今作以来、ミシェル・ゴンドリーによる“恋愛妄想のすすめ”が、核心に触れ続けている。映画を観る理由だ。願わくば、復習編ではなく予習編としてご教示願いたいものだ。恋の痛みを知るすべての人へ……では手遅れだよ。映画じゃないんだから。 ☆4.5 (2016/03/22)

ガスパール/君と過ごした季節(とき)

フランス映画において、はぐれ者が行き着く先は海だと相場が決まっている。 浜辺で食堂を始めるために、廃屋を修築中の二人と一人と、もう二人。妻に裏切られた夫と、母に捨てられた息子、家族に捨てられた老婆に、社会に見捨てられた母娘。幼くしてすべての…

マイ・マザー

“母親への愛は無意識であり 親離れの時 初めてその根の深さを知る” 神かブッダかは分からないけれど、僕はその存在を信じている。親と子の神話を信じている。だけど、そのファンタジーを望めば望むほど、母は遠くへ、人と人の間に軋轢が、現実が立ちはだかる…

ピエロがお前を嘲笑う

孤独な少年はただ仲間が欲しかったんだ……って思っちゃったわ、ラストのラストまで。どんでん返し返し。少年の成長譚と、それを裏切る納得の結末を用意しておきながら、さらなる反転。 “人は見たいものしか見ない” まさに、ピエロが観客を嘲笑うことが目的化…

アントマン

『ミクロの決死圏』をはじめとする、人体極小化系サイエンスフィクションの系譜には欠かせない神秘性。今作は、原子以下の禁断の領域として、時空の概念を排する量子の世界を用意している。 キュアーが流れるバトルミュージックの、Siri演出にはニヤリ。 ☆3.…