豪胆でイリーガルな男。ひ弱な優男にとってそれは天敵だ。
一度目を付けられると最後、主導権が返ってくることはない。彼のルールで事は進み、悪道へ引き込まれる。
うんざりしながらも断ち切れないのは、心の隅に隠せない憧れ。
誰しも、“僕の映画のスター”を陰から見つめるだけの人生はイヤだ。“天使”とメレンゲを踊りたい、本当は。
「ダンスホールはいらないぜ。俺たち4人でいい。俺たちが重要なんだ。この宇宙でちっぽけな微生物だが一緒なら世界ほどデカい。そこだよ。全て順調だ。さあ、シャンパンを買って帰ろう」
彼にできないことはない。この夜は彼のものだ。そんな男が人生を宝物に思わせる。
父は生まれた日に死んだ。ドストエフスキーとニーチェに育てられた若者が遅れて迎える、これも父殺しの成長譚。
☆4.6
(2016/03/31)