散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ルルドの泉で

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ほぼ全編にわたるフィックス、からのパン、ズームインといった無機的なカメラワークは、祈りという人間特有の現象への観察、記録映像のようなドキュメント性を感じさせる。
主観を極力排除した俯瞰の構成は、あるいは神の視点。
故に、起こる奇蹟の真偽、その解釈についても、神のみぞ知るままに終わるものであり、理解が及ぶのは、奇蹟の周辺における人間模様。

“絶望のさなかの人物が ふと、神の恵みで 人生の意味をさとる これもまた奇跡”
神父による欺瞞的な回答であるが、この映画が垣間見せる唯一の救いでもある。
奇蹟の存在を未確認とする立場をとりながら、人が心の内に確認する奇跡を肯定するよう。


☆3.8

(2016/03/23)