散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ザ・ヴァーチャリスト

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映画が好きで、言わば“映画セラピー”によって人生を救われている身として、“ゲームセラピー”を批判的に捉えるのは躊躇われるところもあるが、「ゲームと現実の区別がつかなくなる」というクレームの正否はいずれ逆転するときが来るのだろうと思う。
ハイクオリティな仮想空間が現実を超える近未来はおそらくすぐそこまで差し迫っていて、その中毒性は現在のテレビゲームの比ではなく、副作用と言えるほどの自我の暴走も予測できる。
そうなっても仕方がないほどの、もう一つの世界を創る技術を人類はもうすぐ手にする。

自分のアバターによる疑似体験と、自分とは違う主人公への自己投影では、介在する他者性の有無によって根本的に違った現実逃避であると映画への没入を肯定したいが、いずれにせよ、虚の世界に留まりたいという欲求は発生し得る娯楽である。

いつまで、夢は、“現実の中で闘ってこそ意味がある夢”であり続けるのか。
“ガールフレンドセラピー”が万能薬であることが世界の男の子の真実である現在の想像力では、計り知れない未来がやってくるのか。

作品としては、『マトリックス』『アヴァロン』『攻殻機動隊』などの影響を感じられなくもないが、その表層だけを真似ただけの有象無象の一編に過ぎないと言わざるを得ない。


☆2.8

(2017/6/24)