散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

キャロル

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そっと肩に触れる手の、穏やかで、熱っぽく、なんとエロティックなこと。

交差する視線に零れる吐息、波打つ鼓動は、映画だけが醸し得る甘美と言う他ない。全編にわたって注がれる、柔和で繊細、優美なそれは女の愛撫に酔いしれる。

「愛からなされることはいつも、善悪の判断の向こう側にある」とは、ニーチェの言葉。
偽らざる人生への、“不道徳”のすすめ。

理想と現実、愛と社会に相対し、“ロマンティック”を獲得する恋人たち。『卒業』のエンディングも含意される、珠玉の“純愛”映画。
人波の先に再び“天使”を見つけるラストシーンは涙で霞んでしまい、淡い暖色の照明がただただ光輝いて見えた。


☆4.7

(2017/6/23)