散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2020-01-01から1年間の記事一覧

トゥルース・シーカーズ ~俺たち、パラノーマル解決隊~

我らがボンクラコンビ、サイモン・ペッグ&ニック・フロストのやってみたシリーズ最新作。『ショーン・オブ・ザ・デッド』でゾンビ映画を、『ホット・ファズ』でポリスアクション、『ワールズ・エンド』でインベージョンSFをブリティッシュパロディ化した3部…

ザ・スクエア 思いやりの聖域

『フレンチアルプスで起きたこと』がそうであったように、とある一つの出来事をきっかけにして雪崩式に失墜していく権威の滑稽さをシニカルに、挑発的に見つめるブラックコメディ。 ただのエスタブリッシュメント批判ならば政治的な側面を語るものが昨今の常…

コンジアム

韓国製、モキュメンタリーホラーの最先端。POVの一人称視点を軸に、小型化、多機能化する最新ガジェットの多彩なカメラワークが、前後左右、そして上空へとその臨場感にさらなる奥行きをもたらす。特に“アクションカメラ”の導入は画期的で、テレビ的な浅薄な…

ザ・ボーイズ シーズン2

度を越したグロテスクがシーズン2ではなおも露悪的に、さらに躁病的にカリカチュアライズされて描かれる現代アメリカの肖像。 アメリカン・マチズモの病も、もはや末期症状だ。 肥大した自我の葛藤と並行して、深刻さを増す市民の対立。まさしく文化的内戦状…

ジュラシック・パーク

虚構。それは神へと近づく所業。人間の飽くなき夢と欲望、つまり本能の、美しさと醜さを映したフィルム。 "Journer To The Island" その夢と浪漫と恐怖に満ちた冒険のひと時こそが、僕の映画原体験に違いなかった。(記憶の捏造により、いくつかの原風景が存…

続·ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画

まさかの大統領選直前!帰ってきた、続・アメリカ地獄旅。すでに面の割れてしまっているボラットではあったが、今回は娘のトゥーターちゃんを相方に前作をも超える過激な悪戯で善良なる市民の本音をあぶり出し、“栄光なる国家”の恥部をさらけ出していくのだ…

未来警察

あの『ジュラシック・パーク』の、あの『ER』の、マイケル・クライトンによる何ともお粗末なB級アクション。だが、まだまだAIという新たな概念が不確かであった時代の、無邪気な近未来像としては微笑ましくも見られる。 「暴走するロボット」のモチーフは、…

マイ・ブルーベリー・ナイツ

ノラ・ジョーンズのスイートなたたずまい、スモーキーなその歌声がウォン・カーウァイの映像詩を一層、夢幻的に響かせるのだった。 視覚と聴覚を通して、匂いも、味も、肌のぬくもりさえも。五感で愛と触れ合うような、夢と現実が溶け合う陶酔。映画という魔…

美しき結婚

ロメールの長回しに映し出される気まぐれな“エゴイズム”の交差。これが、なんと愛らしく豊かな人間描写であろうか。 はやく大人になりたい、けどつまらない大人にはなりたくない。少しばかり知的で繊細なあまり、つい美しく生きたい、非凡でありたいと夢想し…

飛行士の妻

会話劇という演劇性と、映画的な即興性とが結び合うヌーヴェルヴァーグの黄金。パリという劇場を舞台に、恋人たちのフランス語は韻律を奏でるように。街の喧騒を通り抜け、柔らかな陽光を浴びながらその瑞々しくも重層的な悦びにまどろむ。 (そういえば『ビ…

アンダー・ザ・シルバーレイク

隣家に、ヒッピーくずれのヌーディストを覗き見る冒頭にすぐさま『ロング・グッドバイ』を想起する。これが正解。謎に次ぐ謎に意味を与えて全貌を解き明かそうとするミステリーへの欲望を捨てて、ただただブロンド美女の残り香に誘われるままに、Los Angeles…

ザ・グレイ 凍える太陽

『生きてこそ』×『エッセンシャル・キリング』のような、地の果てに抽象化される生と死の対峙。 “思い出”に呪われた男がもう一度、人生を取り戻すための闘いを、観念的に、寓話的に描いたまごうことなきサバイバル・ムービー。 ひとえに、実生活においても最…

カーリー・スー

80's的イノセンスの終焉とともに表舞台を去った青春映画の名手、ジョン・ヒューズ。彼の最後の監督作。 はぐれ者たちの青春を彩ったフィルモグラフィーのラストを飾るのも、やはりはぐれ者の人生に光を当てたロマンチック・コメディー。ただし、スクールカー…

ER緊急救命室ⅩⅤ <ファイナル・シーズン>

物語は終わる。それでも続く人生を共に、それぞれの場所で歩み続けよう。数えきれないほどの忘れえぬ思い出を抱きしめて──。 S1 ep.19 "Love's Labor Lost"S2 ep.7 "Hell and High Water"S3 ep.11 "Night Shift"S4 ep.15 "Exodus"S5 ep.15 "The Storm - Part…

ER緊急救命室ⅩⅣ <フォーティーン・シーズン>

父性の不在は長らく、母性なる愛の庇護も得られないまま戦い続ける“ブラザー”たちの絆。そのナイーブな繋がりを守りぬくために重ね合う思い、募らせる愛と感謝の言葉。そして大粒の涙。 いつわりの正義、まやかしの信仰。打ち砕かれた幻想の傷痕──。いずれ向…

マッドマックス 怒りのデス・ロード

2015年7月某日、立川シネマシティ【極上爆音上映】にて。忘れえぬ映画体験。心臓を揺らすほどの、暴力的なまでの轟音の感触とともに──。 映画的なるものの本質と、その美の復興をはかるべくアクションという表現方法に純粋化されたストーリーテリングは、神…

ER緊急救命室ⅩⅢ <サーティーン・シーズン>

「公助」の不備が社会不安を醸成する。あらゆる対立の根っこにある不安からの恐れ、そして偏見、憎悪の悪循環。 慈悲の心、それだけではもう“止血”しきれないほどに疵だらけのこの世界で、荒廃する人心。 当然のように弱い者から順に切り捨てられるシステム…

ER緊急救命室Ⅻ<トゥエルブ・シーズン>

無常。すべては虚ろ──。 地獄の果てのさらなる地獄で、友が一人また一人と去っていく。 ★4.0

チェイサー

正義と悪の追走劇は数あれど、これほどに切実な、現実的であるがゆえに深刻なシチュエーションもそうはない。それがノンストップ・カーアクションに繰り広げられる悪夢的体験の持続。 恐怖はやがて怒りに変わり、あるいは愛が愛だけに、その裏腹の狂気を目醒…

ER緊急救命室Ⅺ<イレブン・シーズン>

"The Show Must Go On" 僕らが僕らであるために。変わり続ける者だけが変わらずにいられるように。回り道でも、傷つきながらも進み続けるしかない人生のY字路。 「さよなら」は、また会う日までの約束の言葉だ。 ★4.0

さびしんぼう

混在する夢とうつつ、現在と過去。生者と死のイメージをモノクロームの影に漂わせながら、交わるはずのなかった恋の“さびしんぼう”がファインダー越しに見つめ合う。 「A MOVIE」と冠されたそのフレームの中で、まさに映画の虚構性にのみ語りうるロマンチッ…

ER緊急救命室Ⅹ<テン・シーズン>

涙の数だけ強くなれるよ。また明日、頑張ろう。 ★4.0

映画 聲の形

いつも不安で、いつも孤独を恐れるあまり、過剰な自己防衛で傷つけ合ったあの頃。あの日、あの時の記憶はいつまでも鮮やかなまま。清らかな少年時代を濁らせた波紋が今も心の奥をざわつかせる。 償いきれない罪を背負い、数えきれない「ごめんなさい」を心に…

ER緊急救命室Ⅸ <ナイン・シーズン>

構造的な人種差別や労働問題など、長らく放置されてきた今日的課題をついに是正させるべく声を上げる新世代。若者たちの反乱。しかし皮肉にも、その拙速な変革に招かれる効率化の波は人道主義をなおざりにする。崇高で愚かな信念は、強大な官僚主義に飲み込…

ER緊急救命室Ⅷ <エイト・シーズン>

父性の不在に弱体化する“家族”と、その絆。 世代交代と共にかたちを変えて受け継がれる“家族”の、その思い。 バラバラの子どもたちを襲うさらなる苦痛と失意と悲しみは、しかし彼らの新たなる友情を固く結ばせるかのように。 過ぎし思い出と再会の日を夢に見…

ER緊急救命室Ⅶ <セブンス・シーズン>

でも、走り続ける──。 暗黒の夜空を見上げながら。降りしきる雨にうたれながら。 愛ゆえに憎しみ、傷つき合いながらも、愛ゆえに救うべきすべての命を救うために。 純真なままでは務まらない彼らの矜持よ。 ★4.0

ER緊急救命室Ⅵ <シックス・シーズン>

「ありがとう」そして「愛してる」、その二言に生かされ死んでいく人の一生。 “家族”という繋がりの確かさゆえの苦しみ、愛おしいほどに切ない運命の糸を手繰らせるように。 ★4.5

MEG ザ・モンスター

サメサイズマシマシで、ジェイソン・ステイサムの“アドレナリン”マシマシ。マーケティング規模マシマシで見せ場マシマシ(ゴア描写なし)の挙げ句もはやほとんど味のしないデカ盛りムービー。 バカ映画だなんだと言いながら世の映画ファンがB級、あるいはZ級…

ER緊急救命室Ⅴ <フィフス・シーズン>

「我が家」がいつか「故郷」とその名を変えるとき。 ある者は自分の人生を取り戻すため。ある者は正しくあるため、信念を貫くために。愛がために離ればなれの道を行く友であり、兄弟であり、同志たちの別れの季節。 再会の日を夢見て。今はそれぞれの場所で…

ER緊急救命室Ⅳ <フォース・シーズン>

手を差し伸べることで不安や恐怖を癒やすことはできても、彼らの人生を繋ぎ止めておくことはできない。 “我が家”と呼べる居場所を持ちえず、“家族”と呼べる思いを失い。心の穴を暗い灰色の陰が覆う者たちの夕べ。 孤独ゆえの愛が交錯すれば、愛ゆえの憎しみ…