散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ザ・ボーイズ シーズン2

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度を越したグロテスクがシーズン2ではなおも露悪的に、さらに躁病的にカリカチュアライズされて描かれる現代アメリカの肖像。

アメリカン・マチズモの病も、もはや末期症状だ。

肥大した自我の葛藤と並行して、深刻さを増す市民の対立。まさしく文化的内戦状態にあるアメリカ社会に渦巻く不安、ゆえの怒り。対する諦念的な無力感や徒労感を含め、出口の見えない闇を突き進む。

知性や品格といった建前論を忌み嫌い、憎悪に根差した主義主張をぶつけ合う。対話や熟議などすでに成立し得ない民主主義の危機において、歪んだ愛国心こそが分断を加速させるブラックコメディーのようなほんとの話に笑いも引きつる。

"MAKE AMERICA GRATE AGAIN"

そんなまやかしとの共依存関係は早晩、破局を迎えるとしても、トランプ現象に扇動、顕在化された 相互不信はそう簡単に解決されるものではない。しばらくはその後遺症を引きずる閉塞感に次なる“怪物”の登場が──それがヒーローかヴィランのいずれであろうと──さらに国家を二分しないとも限らない。

処方箋なき分断の時代。毒をもって毒を制すように、劇薬かともすれば麻薬を打ち続けるかのような熱狂に次ぐ熱狂のさらなる副作用。

現実を覆うファンタジーに、真実を映すフィクションのカウンター。タガの外れた現実に対し、タガの外れた虚構の先鋭化。

"AOC"を彷彿とするニュースターへのまなざしが、今シリーズのアティテュードを明確にする。それは「正しくなくも、楽しい」快楽の延長。しかし党派性に縛られない気高きパンク精神だ。

壮大なリアリティショーと化した大統領選と並んで、アメリカの今を象徴化する傑作。


★3.5