散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

続·ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画

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まさかの大統領選直前!帰ってきた、続・アメリカ地獄旅。
すでに面の割れてしまっているボラットではあったが、今回は娘のトゥーターちゃんを相方に前作をも超える過激な悪戯で善良なる市民の本音をあぶり出し、“栄光なる国家”の恥部をさらけ出していくのだが……

これがいかんせん笑えるには笑えるものの、14年前のあの衝撃には遠く及ばず。なんとも複雑な感情を抱きながら苦笑いを浮かべざるを得ない。ニュースやSNS等で伝えられる信じがたいアメリカ社会の“真実”をなぞるような断絶の風景は、もはや嘲笑の対象ではなくなっていた。憐れ、あるいは恐れをはらんだ深刻なまなざしを送らずにはいられない。つまりはそれゆえに、笑いで対抗する他ないのだと頭では理解しながらも、この救いがたい人間の途方も無いディスコミュニケーションを目の当たりにしては言葉もユーモアも失ってしまうのである。

まるで虚構のような狂った現実を前に社会風刺が機能しなくなっていることの証左か。この4年間、現大統領が自らその醜態をもって喧伝してきた“成果”か。高尚な建前よりも愚かな本音を良しとするトランプ時代に、ジャーナリズムに続くコメディーの劣勢を見ている気がしてならなかった。


☆3.8