散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019年の映画生活ベスト10

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1. 50回目のファースト・キス
“人生とは、記憶の積み重ねそれ以上の感情で彩りあふれるものだから”

2. ありがとう、トニ・エルドマン
“GREATEST LOVE OF ALL”

3. 赤ちゃんよ永遠に
“誰かにとってのディストピアは誰かにとってのユートピア

4. ノクターナル・アニマルズ
“物語によって救われた人生はまた物語によって縛られる”

5. ヴァレリアン 千の惑星の救世主
“幾千の物語、幾万のラブソングに語り継がれた至上の価値”

6. セールスマン
“尊厳を揺るがせる暴力性が分断を生む”

7. トラスト・ミー
“──死に至る病、絶望に戯れながら──”

8. ファントム・スレッド
“男と女のクラシック”

9. レディ・バード
“愛しくて愛しくて、死ぬほど涙がこぼれそう”

10. アメリカン・ハニー
“無垢が自由と愛と、優しさへの本能であらんことを”

 

ヴァレリアン 千の惑星の救世主

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めくるめくワンダー。
摩訶不思議アドベンチャー
未知への想像は、時空を超えたスペースファンタジーへの夢を広げる。

フィフス・エレメント』の再構築。まるで『スター・ウォーズ』的世界観。それもそのはず、それらSF映画の金字塔の、創造の種は本作の原作にあり。『アバター』の技術的ブレイクスルーを経た後、ついに結実されたレトロフューチャーリュック・ベッソンの悲願、集大成とも言える、愛にあふれた一大巨編。

デヴィッド・ボウイの「Space Oddity」がオープニングを飾り、エンディングテーマをファレル・ウィリアムスが書き下ろす。さらには、ハービー・ハンコックが、リアーナが、と、音楽界から新旧レジェンドたちの共演が映画を一層ポップに彩る。

実に“カラフル”な本作において、多様性の時代を象徴するカーラ・デルヴィーニュの佇まいは、原作と現代性の一致点を繋ぐべく存在する、“プリンセス”を否定するヒロイン像。冒険活劇におけるヒロインが対等な関係としての即ち“相棒”であれば、ロマンスはバディムービーに近似するという再発見とともに、「愛とは信頼」なんて使い古されたメッセージも彼らは飄々と語りうるのだ。

幾千の物語、幾万のラブソングに語り継がれた至上の価値。歴史を鑑みれば、取るに足らない一本の映画に違いないとしても、それが愛という名の意味を問う限り、語ろうとも語ろうとも語り尽くすことはないのだろう。


☆4.4

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

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愛なき力はただの暴力。目を覆うばかりのグロテスク。それは、闇に紛れた野蛮な秩序が可視化されたに過ぎない光景。厳然として存在し、我々自身にも内在し、誰もが傷つき傷つけ合う人間の本質が戯画化されて浮かび上がる。

いつの世も、闇が世界を覆い尽くさんとする。それが現実。そんな現実の、闇が深みを増すほどに、光の虚構は眩しさを放つ。輪郭をあらわに、光と闇の表裏一体、善と悪の果てなきせめぎ合いを壁一面のスクリーンに映し出す。あるいは、子ども部屋のブラウン管に見た光、手のひらサイズのスマートフォンに見た光、またはマンガや小説に綴られた数々の物語。それらすべての嘘の作り話が、人々に勇気や希望の灯火を繋ぐ。架空の主人公、架空の台詞に愛や正義の何たるかを知る。弱きを助け強きを挫く“鋼鉄の意志”は、彼らによって心の奥底に刻まれている。

皆はそれを、ヒーローと呼んだ。

ある日、力を手にしたゴロツキが、私欲を捨てて、愛を知り、そして正義に目覚めるまでの成長譚は、スーパーヒーローの王道をゆく。
かつて誰もが子どもだった頃に、信じて疑わなかった物語を繋ぐ。


☆3.7

ぼくの名前はズッキーニ

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風をとらえて、カイトは空へと舞い上がる。
風をとらえて、ヨットは荒波をかき分けて進む。

冷たい風が頬をかすめる。
風の愛撫が涙をぬぐう。

幼き心を運ぶ風。
優しくあるように。逞しくあるように。


☆3.6

フォー・クリスマス

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愛とは決して後悔しないこと
という名訳の本来の台詞は、
"Love means never having to say you're sorry."
愛は、ごめんなさいを必要としない。

それは、“ラブ・ストーリー”。
これは、ラブ・コメディー。とて、ラブストーリー。“ある愛の詩”には違いないもの。

すべての台詞が歌われるならばミュージカル。すべてのシーンで笑えるならば、コメディーの中のコメディーか。
どんな怒りも悲しみも、どんな悲劇も喜劇に変える知恵とは、ユーモア。あらゆる過去を笑いで包む優しさ、そして逞しさ。未来に転がり続ける意志よ。

メリークリスマス。からの、ハッピーニューイヤー。オモシロおかしく、煩わしい人生に乾杯!


☆3.4