散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

赤ちゃんよ永遠に

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遡ること10年か、それ以上。映画にハマり、まずはカルト映画と名のつくものをひたすらに漁っていた頃から。見たい映画リストの1ページ目に記されながらチェックされることのなかった本作を、ついに某所で発掘……!

70年代SFの近未来ディストピア観。
自然破壊と放射能汚染。スモッグで覆われる視界は偽物に溢れる、“プラスチック”な未来都市。
嫉妬と猜疑心の相互監視は全体主義へ。テクノロジーは管理社会の統制に用いられる。

そして人口増加による食糧危機。“世界連邦会議”による政策は、妊娠出産の禁止令……同じ服を着た大人たちが交換可能な赤ちゃん人形を愛でる世にも恐ろしい光景が……今以て非現実的とは言い切れないところに薄ら寒い恐怖を覚える。

しかし支配階級の言う、「適者生存」の社会の行く末はそうか。誰かにとってのディストピアは誰かにとってのユートピアであったか。

ならば、恋人たちは反逆者。
THX-1138 』、『2300年未来への旅』も同じ。愛は自由への欲望、またその逆も然り、自由への欲望は愛の本能を呼び覚ます。
愛がすなわち罪となる世界を逃走する──。
ユートピア”を捨てる二人には、アダムとイブをなぞらえる。


☆4.4