散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

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愛なき力はただの暴力。目を覆うばかりのグロテスク。それは、闇に紛れた野蛮な秩序が可視化されたに過ぎない光景。厳然として存在し、我々自身にも内在し、誰もが傷つき傷つけ合う人間の本質が戯画化されて浮かび上がる。

いつの世も、闇が世界を覆い尽くさんとする。それが現実。そんな現実の、闇が深みを増すほどに、光の虚構は眩しさを放つ。輪郭をあらわに、光と闇の表裏一体、善と悪の果てなきせめぎ合いを壁一面のスクリーンに映し出す。あるいは、子ども部屋のブラウン管に見た光、手のひらサイズのスマートフォンに見た光、またはマンガや小説に綴られた数々の物語。それらすべての嘘の作り話が、人々に勇気や希望の灯火を繋ぐ。架空の主人公、架空の台詞に愛や正義の何たるかを知る。弱きを助け強きを挫く“鋼鉄の意志”は、彼らによって心の奥底に刻まれている。

皆はそれを、ヒーローと呼んだ。

ある日、力を手にしたゴロツキが、私欲を捨てて、愛を知り、そして正義に目覚めるまでの成長譚は、スーパーヒーローの王道をゆく。
かつて誰もが子どもだった頃に、信じて疑わなかった物語を繋ぐ。


☆3.7