散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

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全編、パソコンの画面上で話を展開させるというワンアイデアに終わらせない巧みなプロットが、サスペンスフルなストーリーに人間ドラマを立ち上がらせる。鮮やかな伏線回収もさることながら、父泣き映画の評判に違わない感動が待っている。

まさかカーソルの動きや、タイピングの速度によって主人公の心情が語られるとは新鮮な喜びであるが、やはり映画は視界を限定するカメラワークによって移入を促すマジックだ。
観客の視点はモニター上の、さらに主人公がフォーカスする視点に同期する。四辺に制限されたフレーム内に、およそ無限にも広がる情報の海から真実を“サーチ”する行為。それはまさに映画を見る行為によって、真理を見出そうとする観客のメタ視点と重なりやしないか。

感情移入とあわせて、革新的かつ映画的な手法によってもたらされる臨場感。極めて現在的な、つまりは十分に批評性を帯びた秀作。
2018年を代表する作品として数えられるに違いない。


☆3.7