散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

クラウン

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スパイダーマン ホームカミング』、『COP CAR コップ・カー』より遡って、ジョン・ワッツ長編デビュー作においても、父性と対峙する少年の成長譚をモチーフとするその作家性は一貫しているが、他二作に比べ、少年としては最も幼く非力で、乗り越えるべき父性としては最も邪悪で強大な力関係に、モラルテイルとしてのジュブナイルホラーは機能せず。むしろ、おとぎ話から遠ざかるように遠ざかるように、不条理なバイオレンスが子供たちを襲い、嫌な悲鳴をあげさせる。

とはいえ、父の二面性の表れである“嗤う分身”に向かって「あれはパパじゃない」なんてあっさり言ってしまえる薄情な息子、そればかりか、母の手を借りて“父殺し”をさっさと終えてしまう幕切れなんかはなかなかに笑えるのであって──これが父と息子のリアリティー、母と息子のファンタジー──結局は、道化を免れない哀しきクラウンの末路に、憐れみの歌は流れるのだった。


☆2.9

(2018/12/15)