散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

悪魔の陽の下に

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無力な、無意味な人生の実存に迷い、神の道を外れ、絶望の淵をさまよい歩く人間の、沈黙の叫び。
死ぬまで終わることのない試練と孤独の闇に陽の光が差し込むならば、悪魔も救いの神となろう。

内なる悪を知ることで再び善は認められ、やはり愛へとたどり着く。しかし、愛からなされることはいつも善悪の彼岸でおこるのであって、愛とは人への祈りであった。信仰は消えず形を変え、人の世の道なき道には、各々、自らの手で灯をともさねばならない。

暗闇に浮かぶ光源をすがる思いで見つめていた。暗闇に“映画”は寄り添う。人智が生み出す“奇跡”──空間、時間、人間の魔術的な連なりによって映し出される人智の及ばぬ風景──に安らぎは訪れる。
だが、その静寂もまたひとときのうちに終わり、沈黙の叫びが響きはじめるのであった。


☆4.1

(2018/12/14)