散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

さすらい

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前夫人に「わたし、もうあなたを愛していないの」と、一言を残して去られたアントニオーニの、「ではどうすればいいんだ?」という疑問が写実される。
その答えは当然に出ない。苦悶する男の絶望の叫びが延々と映し出されるだけ。
「難しく考えたらキリがない。ゼロはいくつで割っても永遠にゼロであるように、単純に割り切れば明快だ」。それは諦念なのか。

“愛の不毛三部作”を前にもうすでに描かれた男の悲哀。

ある日突然、愛を拒まれ、失った。それは全人格の否定に受け取られた。根本的に、生き方について平衡感覚を失ってしまった男は、舗装されない道を流離う。帰る場所、拠り所など何処にもなく。


☆Review

(2016/08/22)