散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ブリス ~たどり着く世界~

この世界はすべて誰か何かのシミュレーションに過ぎないという形而上学的思考への第一歩を、そのまま映画にしたような幼稚な世界観にはたやすく同調してしまえる一方で、それは現実逃避の産物であるという客観視点を同時に持ち合わせていなければならない。そうでなければ狂っている。

夢に描く理想がいくらフェイクであろうと、そこで得られる感情がリアルである限り、夢と現実の境界線は失われるのだ──といった論理の飛躍にも病的な妄執を自覚する。

虚構とは、人々が共有しうる限りにおいて機能するものである。その一線を越えて信じるものはカルトであり、孤独の病であり。決して人を“幸せ”にするものではない。


☆3.0