ぼやけた視界に焦点を絞って、ズームインしていくカメラが必ずしも核心を捉えるとは限らない。
闇の向こうにはただ闇が続く。どこからか光が差し込む、そんなことはない。絶望なら果てはない。深まるほどの大層な謎もなければ、納得のいく真相にたどり着くこともない。死は死でしかない、不条理であっても。
受け入れられるはずのない現実を前に、男の視界には闇と幻影が延々と広がっている。
闇の黒を浮き立たせる赤。レフンの場合、彼の色覚が要求するビビッドなライティングが陰と混ざり合って、他の何とも違う異空間を創り出す。
それはまるでリンチ映画の相似形。
ベタを闇に放り込んで、時空を揺らして超現実を現す。
悪夢と呼ぶならそうであろう。
ただ、遁走の中で彼らが口にするチェリーパイやアップルパイは美味である。
☆4.2
(2018/05/04)