散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-20から1日間の記事一覧

ファンキーランド

生まれた時からその面倒には巻き込まれている。自分の人生は自転しながら、近付いては少し離れてを繰り返して、彼女の人生の周りを公転し続ける僕の人生。抗われることはあっても消滅することはないその引力。 宇宙の中心、お母さん。マザーコンプレックス。…

ファインド・アウト

ヒントは青のストライプのパジャマ。 この信用できない語り手の訴えは、まずもって聞く耳を持つに値すべきシチュエーションのもの。孤立無援の弱き存在が嘘八百を並べ立てながら突き止めようとするその真実は、まさに現代社会における隠された真実 、闇に葬…

グリーンルーム

割られた蛍光灯の粉塵は白く舞い、ナイフに滴る血は黒く。鮮やかに光るネオンピンクには“EXIT”の文字。 グリーンをベースカラーにどんな差し色もスタイリッシュに映える。同時にどこか気の休まらない不穏を感じさせる色調。この感じは好きな感じ。あの大好き…

ルーム

父と母の間にはなく、父と子の間にもなく、母と子の間にだけ固く結ばれる絆。もっと言えば、母と息子の愛の永遠。絶対に手放したりしない一番の“ホンモノ”。 四方を頑丈な壁で閉ざした“部屋”から、スカイライトに覗く、光注がれる外の世界へ。どこまでも高く…

グレートウォール

ひとまず万里の長城だとか、中国4000年の歴史とかは横に置いといて、『ロード・オブ・ザ・リング』や『進撃の巨人』なんかと同じように、まるっきり架空の世界の昔話だと思えばいいんじゃないかな。 人間とは類似性の希薄なクリーチャーに暗喩としての機能は…

ボーダーライン

厳然たる事実として、法秩序の上位には力による支配が横たわり、水面下ではその覇権を握る戦争が日々繰り広げられている。知ろうと知るまいと、それがこの世界の真の秩序である。 力こそすべて、力こそ正義が成り立つ戦場へと一歩足を踏み入れた善良なる弱者…

私はゴースト

ここがどこで、あなたが誰であれ。 私はゴーストであろうと、生者であろうと、病者であろうと、悪魔の憑かれ身であろうと、最期は等しく完全なる“無”に飲み込まれることは、抗いようのない恐怖であるということ。 ☆3.1 (2018/06/04)

ウィッチ

禁忌を強いて、善と悪を定める信仰にあらば邪悪の概念は生み出され、その化身としての魔女が創造される。 他方、魔女の存在は、抑圧に押しつぶされ、砕かれる魂が最後にすがる灯火ともなり得る。この世に、地獄の業火に焼かれる責め苦を生きる者にとって、畏…

幸せになるための恋のレシピ

抜き差しならない生活に、それでも出会す人と人との間に優しさは零れる。つかの間のオアシス、優しさに包まれる街角を切り取る映画を見ている。夕暮れの、静かな木洩れ陽の中で。愛しい人を抱きしめたくなる。抱きしめると感じられる温もりに触れる。 “幸せ…

スプリット

孤独やトラウマの、苦悩が見させる悪夢を具現化し、その超克を“ストーリー”に託す、紛うことなきシャマラニズムの真髄。ファンタジーへの狂信。まさしく、カルトなるもの。 ☆3.7 (2018/06/02)

ゴースト・イン・ザ・シェル

魂の在処を思索することもなく、アニメ版の名シーンを無機的にパッチワークするだけの謂わばまるでファンムービーに、堪らず音声を吹き替えに切り替えたところ、これが図らずも『攻殻』を成り立たせるアイデンティティーに触れるスイッチとなる。オリジナル…

かぐや姫の物語

「生きるために生まれてきたのに」死にたいほどに辛いこの地より逃れることを思う。なのに、悲しみの淵にあって、“いのちの記憶”は生の喜びを物語る。 “過去のすべて”を“未来の希望”と歌うアニメーションが、ここではないどこかの幻を願いながら偽りを生きる…

フェア・ゲーム

ごく数人の権力者の思惑に沿うように事実は捻じ曲げられ、真実は闇に葬られる。不正が正されず、そんなことが続くようでは民主主義も形骸化していると言わざるを得ない。 政府による犯罪。不正、汚職は国民に対する明確な背信なのだから。見え透いた嘘を看過…

恋人はゴースト

王子様のキスで目覚める眠り姫と、悲しみに暮れ、まるで冬眠するように静かに時を刻む孤独な“野獣”。 ロマンチックの恋人たち。 話していたい、触れていたいと、距離を近づける二人の鼓動は強く脈打つ。彼女は愛を知り、彼もまた愛を取り戻し、生きながらに…

ウンベルトD

保健所に連れて行かれる愛犬と、金網の屋根を伝う野良猫。子供もいなければ兄弟もいない天涯孤独な老人と、若い妊婦が人知れず流す一筋の涙。 さしたるエンディングもなく幕を下ろす、市井の人々の“不幸”な人生の晩年。光に照らされないほとんどの、陰の世界…

海は燃えている イタリア最南端の小さな島

やけに作為的なフッテージの連続や、必要以上に引き延ばされる余白に何か特別に感じることがあったかと言えば難しい。それは既に知っていることだから。知っていて、見て見ぬふりをしていることだから。対岸の火事を、ましてやモニター越しに目の当たりにし…

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク

ジュラシック・パークが心の真ん中にあり続けるのは、その原初的映画体験が、モンド映画も去りしフロンティアなき時代に編み出された探検記、未知なる世界への夢と浪漫と驚きの冒険活劇そのものだったからなのだろうと、少年時代を思い返すのだ。 「走れ、息…