散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-02-06から1日間の記事一覧

ハイ・ライズ

エロス、グロテスクの露悪的な退廃のイメージがカオティックに連続するストーリーテリングに貫かれた、病的な階級社会の寓話的表現。 その文体こそが、“道理よりも強力な理論” に感服するそのものであった。 しばらくぶりに現れた、奇才と冠するに相応しい映…

ミーン・ガールズ

アフリカの大平原から、アメリカはイリノイ州シカゴ郊外の学園ジャングルへ。何処も同じ、弱肉強食のピラミッドに繰り広げられる珍獣サバイバル。クイーン・ビーからナードまで、歴然としたヒエラルキーに居場所を確保せざるを得ない、期間限定の椅子取りゲ…

旅するジーンズと16歳の夏

ひたむきに生きるすべてのシンデレラたちの、魔法の。ジーンズは、愛の象徴。親友を、そして自分自身を愛することを誓う“ジーンズ同盟”。それぞれ四者四様の成長を描くひと夏の自分探しの旅は、“自分”がわからない普通の、ほとんどの少女たちの、凡庸な、で…

ヘイル、シーザー!

所変われば品変わる。時の流れによって定義は多極化する。厄介な物語。「神」という信仰の物語。 ハリウッドに勃興した新派。巨大セットや絢爛な美術、衣装にうそぶかれる、愛を歌う夢物語。虚業が作り出す虚像。光で語られる虚像に真理を見出さんとする、う…

スター・トレック BEYOND

期せずして、フィクションで扱われる人の命の重さであるが、悲しいかないつもとは全然変わってしまうタイミングというものが、時より訪れる。 “FOR ANTON” 愛すべき弟分、アントン・イェルチンとの早すぎる別れ。今作の活躍を見れば、改めてその稀有な存在感…

ネイバーズ2

映画は編集だ。編集はリズムだ、音楽だ。踊れや騒げやの大立ち回り。ゲップやゲロや、ウ〇コやディルドーや。Fワードが連発されるおバカ、お下劣ネタの応酬がハイテンポにカット割られる痛快コメディ。全員、ハイに。イッちゃってるヤツらのドタバタコメデ…

10 クローバーフィールド・レーン

外界を閉ざされた地下の密室。でっぷり太った得体の知れない男に扉を塞がれ、太陽光を浴びることすら許されない閉鎖空間。息が詰まる。誘拐、それから監禁というシチュエーションほど、リアリティをもって暴力的に訴えかけてくる恐怖演出があるだろうか。映…

ジェラシー

君を愛している。故にこの人生は美しい。喜びも苦悩もすべてを愛し愛されたい。君について知らないすべてのことが狂おしい。その揺るぎない愛は、故に人生を閉塞させていく。愛の言葉が自由を侵す。 合作のはずの愛の物語は、幻想、作者は悲しくも自分ひとり…

ヒップスター

人知を超えたあまりにも悲劇的なカタストロフに打ちひしがれ、芸術家がその口を閉ざしてしまう時。灰色の世界は、すっかり真っ暗な闇に覆われてしまう。あの日もそうだった。自ら芸術の価値を相対化し、卑下し、無力感を吐露する。 そんな言葉を聞くたび、筆…

COP CAR コップ・カー

見知らぬ荒野で拾ったオモチャは、車に銃に…少年たちが普段、囲いの内側では手にすることの出来ない代物。おっかなびっくり、ほんの些細な悪戯のつもりも、外の世界では取り返しのつかない事態を招き得る。罪と罰と、その難局を乗り越えることの意義。ケヴィ…