人知を超えたあまりにも悲劇的なカタストロフに打ちひしがれ、芸術家がその口を閉ざしてしまう時。
灰色の世界は、すっかり真っ暗な闇に覆われてしまう。
あの日もそうだった。
自ら芸術の価値を相対化し、卑下し、無力感を吐露する。
そんな言葉を聞くたび、筆舌に尽くしがたい寂しさを覚える。
できることなら、そんな言葉、聞かずにいたい。
曲がりなりにも芸術を愛する我々“凡人”は、そこに救いがあると信じている。信じる他なく、時を進めている。
そんなこと、それがないと生きていられないことくらい、誰よりも彼ら自身が知ったことではないか。
あれもアートこれも表現と、紛いもの溢れるところに本物の歌は見つかる。
絶望の叫びがまっすぐと心に届き、体を震わす。思い出す痛み。そういえば痛い。体中を走る痛みにその歌は寄り添う。
喜びも、怒りも、哀しみも、楽しみも、あらゆる感情の色を明かし、包み込む陽の光。
決して巻き戻りやしないそれぞれのあの頃に灯りをともし、零れる涙と、束の間の安らぎを与える。
☆4.4
(2017/6/03)