『オフサイド・ガールズ』から10年強、同じ中東諸国でいうと、サウジアラビアで女性のサッカー観戦が一足先に解禁された。イランもその流れにあるという報道もあるが、 果たして実現する日はいつになるだろうか。
車窓から街の風景を眺めるだけでは気が付かないものも、レンズをタクシーの車内に向けると映り込む人々の群像により、強権なイスラム体制下でのイラン社会の実情は窺い知れる。
それぞれの人生という物語が入れ替わり立ち替わり乗り合わせるスリリングなドラマ、人と人の「間」に“俗悪なリアリズム”が浮かび上がる。
映画ならざるドキュメンタリーを創作してまで、国家による「死の権力」を“題材”に描き続けるのは、社会を変革し得る、心ある映画作家としての矜持であろう。
自由を希求し続ける表現者の鑑だ。
☆3.4
(2018/3/11)