散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

シェフとギャルソン、リストランテの夜

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賑やかな晩餐会が終わって一転閑散とする物悲しさから、日が昇り、小鳥のさえずりが聞こえる朝を迎える、わずか3カットの幕切れに凝縮された美の豊かさを味わえるのもある種の特権なんだと思う。
この至福、染み入る余韻。胸の奥の方をじんわり刺激して、ほんのすこし体温を上げてくれる芸術のなせるわざ。

おいしい料理だってそう。
アンティパストからドルチェまで様々な匠の技に舌鼓を打つ悦びもあれば、何気ないオムレツにこめられた愛に触れることもそう。
料理を作る人と食べる人と、食べる人たちの空間に感情の交流は生まれる。
笑みや溜め息がこぼれたり、優しい涙が溢れたり。歌や踊りに華やいだり、喧嘩をした兄弟たちは仲直りをしたり。

そんなことを繰り返している日常の賛歌。
誰かのために、誰かとともに、テーブルを囲めることを喜びだと信じられる人生に乾杯。


☆3.3

(2018/3/12)