散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

明日への地図を探して

すべてを得ては、すべてを失う。それが人生の定めならば、こんな日々の繰り返しに何の価値があるというのか。どうせ失くしてしまうものなんてもう何も欲しくない。いっそ、このまま時間が止まってしまえばいいとさえ思う。

時はひたすらにタイムリミットを刻む。出会いはいつかの別れを意味し、喜びは悲しみに、悲しみは愛に還る。後悔も絶望も愛ゆえに。いつも愛は遅れてやってくる。あの日、あの時、きっとあなたに愛された記憶。そんな“完璧な瞬間”が、拭いきれない喪失を生む。

なのに、今日も、それでも町は廻っている。僕らのために。つまり誰もがそうであるように。悲しみの果てに、やはりどうしようもなく日常は続く。そして“小さな奇跡”が道端に転がる。その豊かさに、美しさもこそ愛ゆえに。まったく、うんざりするほどの、かけがえのない一日が始まる。


☆4.3