散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

テセウスの船

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10話にわたり「テセウスの船」という哲学的問いを託されていたはずの主人公が、まさか一人称ごと入れ替わり、その眼差しと矛盾の対象とを反転させてしまうクライマックスに鳥肌を立てる。

それはタイムスリップという題材に内在される、記憶についての物語。つまりはそれぞれの人生の孤独。孤独の航海を終えた一つの物語に、まさしく名が刻まれる瞬間でもあった。

また、殊更に家族の愛を強調する人間ドラマにおいて、その表裏一体にある憎しみによって、愛ゆえの憎しみによって引き起こされた悲劇の真相は、首肯に値する改変であろう。


★3.0