散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

ミッション:インポッシブル/フォールアウト

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トム・クルーズのスタントが人間離れしていくのと反比例するかのように、齢を重ね、イーサン・ハントというキャラクターは人間味を増していく。

(『ゴースト・プロトコル』以降)チームあっての“スパイ大作戦”という原点に立ち返ってからというもの、傑作続きのシリーズにあって、黄金期は尚も継続中。前人未到を更新する狂気じみたスタントもさることながら、シリーズ史上最もエモい今作については、全6作を貫く集大成としての人間ドラマを見立てることも可能である。

信頼それは友情、自由、贖罪それは愛というような湿っぽい情感が前面に。荒唐無稽なストーリーラインを十分に補って余りある、「数億の命よりも一人の友の命」を救おうとするヒーローの葛藤をありありと、センシティブに物語る一編である。

イーサン・ハントという有り様、それは、トム・クルーズという生き様を伴ってフォーカスされる怪作。その怪物的な、稀代の映画スターの存在感を存分に語りうる万感の2時間半、そして拍手喝采のエンディングテーマへ。

どのジェームズ・ボンドよりも、あるいはどんなアメコミヒーローよりも、またジャッキー・チェンをもついに超えた存在として、『M:I-2』を映画原体験に持つ少年の心に一番星は輝き続ける夜なのであった。


☆4.3