散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

サスペリア PART2/紅い深淵

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またしても“牧歌的なのに寒気のする”歌を手がかりに、主人公は真実という果実を求めて危険な謎に深入りしていく。
なるほどデビュー作のセルフリメイクのようなあらすじを辿る、ダリオ・アルジェントの代表作。

やはりカメラワークが映画の主役であることに違いはないが、今作ではマネキン化した人間を含む背景、耽美が顔を覗かせるヴィジュアル全体の隅々にまで目をやる主体性がこちら側にある。
目を奪われる陶酔感に変わって、真相を見抜こうと、映像の中を視点が流動する快楽が促される。

その快楽は、鋭利な刃物に鮮やかな赤が垂れ落ちる殺人シーンにも継続されてしまう恐怖。刺殺という凶行に性的な暴力性を孕んでいることは、その恐怖を二重にする。
さらに、きもちファンキーなゴブリンのプログレが、まるでバトルミュージックのノリで惨状にかぶせられる時の高揚感は否定し難い。
この瞬間、理性と情緒は分裂している。

悪魔的な。まったく、不良な芸術としての映画だ。


☆3.7

(2018/4/16)