散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

シャドー

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誰のものとも言い得ない不気味な視線。黒の革手袋には刃物。ゴブリンサウンドと悲鳴。鮮血の赤で染まる。

もはや様式美として惨劇が繰り返されるのであるが、なるほど「ジャーロ」とうジャンルは確立され、その代表的な映画作家としてのダリオ・アルジェントということらしい。

しかしとは言え、次から次へと人が殺されていくことだけにクローズアップする今作は、その露悪趣味も一線を越えてしまっているような。
倒錯的な芸術が実社会にもたらした副作用についての自己批評的な側面なのだろうが、娯楽として受け取るにはあまりに劇薬ゆえ、拒否反応を覚えてしまった。

この猟奇性が自身のトラウマ表現の一環なのか、彼の“異常”な美意識の露出なのか、その両方が因果関係で結ばれた産物なのかは窺い知れない闇である。


☆3.0

(2018/4/17)