並列し、交差する奇才の現在と過去の姿に、散りばめられる名曲の断片。浮かんでは消え、また浮かび、頭の中で流れ続けるメロディとリズム。アイディアは消え失せることはなく、映画はそのイメージを小気味よく挿む。音楽的な調子で、いい感じの“ヴァイブス”で。
「ペット・サウンズ」ありきで、本ドラマだけでは片手落ちではとの懸念もなくはない。しかし、すでにアルバムを聴き知ってしまっている身として、知らない状態には戻れない身としてその判断はつきかねるし、また本作を見知ってしまえば、その音楽が以前とは違う聴こえ方をするに違いないという一点でも、音楽作家の自伝映画としての正しさがある。
そして、あんなエンドロールを見せられ、聴かせられると、「愛と慈悲」と冠されたこの映画と彼の音楽を愛おしい特別な作品とせずにはいられない。
最高傑作は遺書ならず。僕らは知っている。君がいなくなっても人生は続いていく。
☆4.2
(2017/1/11)