散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

トイ・ストーリー

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トイ・ストーリーシリーズは、ピクサースタッフが自身の半生を落とし込むように描くことで、観客の共感を呼ぶことに成功した。
子どもの頃はきっと、子どもとおもちゃとの関係にそれを感じていたが、大人になって観返してみると、おもちゃたち同士の関係にこそ写し出されていることを再発見する。

おもちゃの世界は実に人間臭い。
ウッディがバズに抱く嫉妬心に限らない。ウッディは、アンディのお気に入りの座を奪われたことでリーダーとしての威厳を失う。
権威に認められることで地位を確立される集団(おもちゃ的仕事論やアンディへの愛については続編以降)。ウッディを頂点にしたそのピラミッドによって調和が取られているが、実はまだ未熟な信頼関係の上に成り立っている。未熟なリーダーの下で。
そして、少しの綻びが疑心を生み、確証のないうちから排除の動きが止まらなくなっていく光景はなかなか笑えない。

ウッディは苦境に立たされることで、自らの弱みを認める。必要とされる人に応えたいというピュアな目的に気付き、自己犠牲の精神を芽生えさせる。バズ救出計画ではリーダーとしての資質を垣間見せ、生まれ変わった姿を嘗ての仲間に示すことで真のリーダーへと返り咲く。
王道に、通過儀礼を果たすのだ。

また、嘗て子どもだった我々は、自分が何者でもない者だと思い知るバズの姿に、自らを重ねずにはいられないだろう。

アンディはこれから大人になるが、“相棒”とその仲間たちも大人になっていく物語のはじまり。


☆4.6

(2016/03/08)