散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

2019-01-24から1日間の記事一覧

ベアーズ・キス

“道化”の一座のお伽噺。少女と子熊と、“フリークス”たちの逃避行。 孤独な心に寄り添う、夜の闇に見る夢。恋の幻。幻の恋。 幻は幻のままに、“永遠”は物語に継承される。森の霧に消えて行く一組の番い。 シベリアに伝わる民話より。 ☆4.2 (2016/05/22)

恐怖のメロディ

たしかに男は女よりも体力的には優位であるのだが、その過信めいたものが事態を後戻り出来ないところまで悪化させる鈍感さに繋がることもままあるのであった。女のストーカーが徐々に、周到に生活を侵していく恐怖。暗がりからゆっくりと現すその姿に背筋が…

エール!

如何にして音楽的大団円を演出するかというこの手の映画が必ず直面するハードルを、音を消す一工夫によって見事に突破してくれる爽やかな読後感。本当に魅力的な歌声を持つ主人公のキャスティングも、彼女以外の家族がろうあ者である設定もクライマックスに…

悪党に粛清を

10年代新訳西部劇の予感十分のマッツ・ミケルセンの見得により幕が開けるデンマーク産西部劇は、砂埃のたたない冷え冷えとしたスタイリッシュな手触り。 バイオレンスの先鋭化した正統派復讐譚。 温度の低い殺戮が一層痛々しく、また、画面に映らない残虐な…

明日に処刑を…

B級映画の帝王ロジャー・コーマンの下に製作された、マーティン・スコセッシの長編デビュー作。私生活でもパートナーであったバーバラ・ハーシーとデイヴィッド・キャラダインによる逃避行には、偽らざる愛の営みが映されている。 無邪気な愛と暴力の果ては…

ジェレミー

分厚い眼鏡のレンズ越しに、定まらない視線。だらしなく半開きの口元が自信なげな少年を物語る。チェロを演奏している時だけは、本当の自分でいられた。彼女は、そんな僕に恋をしてくれた。愛の調べを受け取って。 9時に電話。7時の待ち伏せ。6時からのデー…

死の恋人ニーナ

ゾンビでもなく幽霊でもない姿で現れる死んだ恋人は、“未練”のメタファー。それは恋人と死別したロブの“未練”のようで、実はロブの新しい恋人ホリーが抱く別の“未練”であったというのが真実。過去の恋愛を聞かれ嘘をつく彼女。“友情の印”を捨てられずにいる…

エヴァとステファンとすてきな家族

反資本主義やウーマンリブを唱える若者革命の空気は、1975年のスウェーデンにも届いていた。 いつも反対のことを言っている。既成の価値を否定するのは、小難しく捻くれた物言いの子どものすることか。しかし皆が同じ“度数”で世界を見ていたら、それこそファ…

13F

“この世の果て”に辿り着くこともなければ、創造主の存在も永遠に不確かな現世を生きる我々が拠り所にするべきは、神などではなく、“我思う、故に我あり”の自我が、恋をする、故に我あることを、幻に見る現実だと確信するより他ない。 ☆3.4 (2016/05/17)