次から次へと、エミリー・ブラウニングはまるで着せ替え人形のように。
ネオアコを中心にオマージュたっぷり、自らの好きなもの、美意識、青春を詰め込んだ、監督デビュー作にして“最高傑作”という評価を下しても早計ではないだろう、実に真っ当にパーソナルをポップに描き出した傑作。
徹底されたレトロスペクティブ。洒落たセンスでデザインされた構図の数々に、音楽と共に踊る16ミリのカメラ。少々粗く連なっていくシーンのダイナミズムは、ミュージックビデオ的というよりはヌーヴェルヴァーグの香り。「コードに旋律を乗せるのよ」。
「自分本位で子どもっぽい歌」とは映画内での自己言及のよう。ここは文化系少年少女だけが踊るダンスホール。されば……少女は電車に乗り、大人の道へ進む旅に出る。
「イヴはこれから輝かしい世界に入るが 僕はこの夏に輝けた」
「この夏こそ最高傑作だ」。
少年はアパートに帰る。
☆4.2
(2016/03/05)