散文とロマンティック

旧映画生活の備忘録

海外ドラマ雑感

ER緊急救命室ⅩⅢ <サーティーン・シーズン>

「公助」の不備が社会不安を醸成する。あらゆる対立の根っこにある不安からの恐れ、そして偏見、憎悪の悪循環。 慈悲の心、それだけではもう“止血”しきれないほどに疵だらけのこの世界で、荒廃する人心。 当然のように弱い者から順に切り捨てられるシステム…

ER緊急救命室Ⅻ<トゥエルブ・シーズン>

無常。すべては虚ろ──。 地獄の果てのさらなる地獄で、友が一人また一人と去っていく。 ★4.0

ER緊急救命室Ⅺ<イレブン・シーズン>

"The Show Must Go On" 僕らが僕らであるために。変わり続ける者だけが変わらずにいられるように。回り道でも、傷つきながらも進み続けるしかない人生のY字路。 「さよなら」は、また会う日までの約束の言葉だ。 ★4.0

ER緊急救命室Ⅹ<テン・シーズン>

涙の数だけ強くなれるよ。また明日、頑張ろう。 ★4.0

ER緊急救命室Ⅸ <ナイン・シーズン>

構造的な人種差別や労働問題など、長らく放置されてきた今日的課題をついに是正させるべく声を上げる新世代。若者たちの反乱。しかし皮肉にも、その拙速な変革に招かれる効率化の波は人道主義をなおざりにする。崇高で愚かな信念は、強大な官僚主義に飲み込…

ER緊急救命室Ⅷ <エイト・シーズン>

父性の不在に弱体化する“家族”と、その絆。 世代交代と共にかたちを変えて受け継がれる“家族”の、その思い。 バラバラの子どもたちを襲うさらなる苦痛と失意と悲しみは、しかし彼らの新たなる友情を固く結ばせるかのように。 過ぎし思い出と再会の日を夢に見…

ER緊急救命室Ⅶ <セブンス・シーズン>

でも、走り続ける──。 暗黒の夜空を見上げながら。降りしきる雨にうたれながら。 愛ゆえに憎しみ、傷つき合いながらも、愛ゆえに救うべきすべての命を救うために。 純真なままでは務まらない彼らの矜持よ。 ★4.0

ER緊急救命室Ⅵ <シックス・シーズン>

「ありがとう」そして「愛してる」、その二言に生かされ死んでいく人の一生。 “家族”という繋がりの確かさゆえの苦しみ、愛おしいほどに切ない運命の糸を手繰らせるように。 ★4.5

ER緊急救命室Ⅴ <フィフス・シーズン>

「我が家」がいつか「故郷」とその名を変えるとき。 ある者は自分の人生を取り戻すため。ある者は正しくあるため、信念を貫くために。愛がために離ればなれの道を行く友であり、兄弟であり、同志たちの別れの季節。 再会の日を夢見て。今はそれぞれの場所で…

ER緊急救命室Ⅳ <フォース・シーズン>

手を差し伸べることで不安や恐怖を癒やすことはできても、彼らの人生を繋ぎ止めておくことはできない。 “我が家”と呼べる居場所を持ちえず、“家族”と呼べる思いを失い。心の穴を暗い灰色の陰が覆う者たちの夕べ。 孤独ゆえの愛が交錯すれば、愛ゆえの憎しみ…

ER緊急救命室Ⅲ <サード・シーズン>

神の如く御業がたとえ命を救ったとしても、その人生を救うことの意味は別にある。人生を苦難から再び立ち直らせるために必要なもの、それは本人の強い意志の力をおいて他にない。 尊敬する師が、親愛なる友がいくら手を差し伸べたところで叶い得ない願いがあ…

ER緊急救命室Ⅱ<セカンド・シーズン>

インターン、レジデント、スタッフドクターと。経験を積み、責任を負うごとに複雑化する組織のリアリティー。現代医学の限界と無力さに打ちのめされながら、不条理とも言える社会システムの残酷さに義憤を募らせながらも、“大人”になっていく彼らの群像。そ…

ER緊急救命室<ファースト・シーズン>

言わずもがな、医療ドラマの最高峰。Emergency Room(救急救命室)を舞台に繰り広げられる命のドラマ──などと感傷に浸っている暇などないほどに、目まぐるしく壮絶な、まるで戦場に飛び込むカメラの臨場感。 連日連夜、隣り合わせの生と死を綱渡りする緊張感…

逃げるは恥だが役に立つ

夫婦を超えてゆけ二人を超えてゆけ一人を超えてゆけ それは(おうち時間を「“うち”で踊ろう」と言い換えたように)あらゆる多様な個人を内包する恋のうた。私たちを縛るすべての──当たり前、常識、普通、そんな呪いのような言葉からの解放をうたう愛の物語。…

アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~

脳をデジタル化すれば記憶の保存は可能である。それを新しい肉体にダウンロードすれば、人間の主体が記憶に基づきアイデンティファイされる限りにおいて、永遠の命は実現し得る。なんてことが、2045年までに!? 倫理、哲学を置き去りにして、未来への繁栄を…

テセウスの船

10話にわたり「テセウスの船」という哲学的問いを託されていたはずの主人公が、まさか一人称ごと入れ替わり、その眼差しと矛盾の対象とを反転させてしまうクライマックスに鳥肌を立てる。 それはタイムスリップという題材に内在される、記憶についての物語。…

ホームカミング

たとえそれが苦痛と不安と後悔の日々であったとしても、過去を奪われることは未来をも奪われることに等しい。 記憶の空白はいつまでも人生に暗い影を落とし続ける。悲劇なき人生は、つまりワイドスクリーンにありうべき世界の風景の半分を失う。 あるいは不…

カーニバル・ロウ

ダークファンタジーに寓意を託す様式美。露わなエロスやグロテスクの表現は『ゲーム・オブ・スローンズ』が押し広げたコードに倣う。 ★3.0

ザ・ボーイズ

スーパーヒーローものかくあるべし、現代アメリカの政治状況を下敷きに絶対的正義を疑う。そのリアリズム志向が行き着く先のグロテスク。 いかにしてヒーローはヒーローたりえるかという性善説的な問いは覆され、ヒーローもまた一人の弱き人間であるという原…

アンダン ~時を超える者~

到底、受け止めきれない悲劇の記憶は、その感情と共に心の奥底に仕舞われる。トラウマとはそう、忘却を装って存在し続ける、無意識下に影響を与え続ける、現在という現実に過去の幻影を混在させる進行性の悲劇である。 保存された悲劇をゆっくりと溶かしてい…

グッド・オーメンズ

フラット化を要請する社会では、対となって先鋭化する思想が緊張を高め合う。あらゆる二項対立は原理主義化。行き過ぎた正義が正義でなくなるように、極端な右も左も同じであるように、いつしか対立と勝利こそが目的化。人間の本質的な欲望、本音をさらけ出…

アメリカン・ゴッズ シーズン2

古き神は廃れ、人々は新たな神を生み出したか、あるいは自らが成り代わろうとする──新旧の神々と人間との三つ巴にあるニューエラ。 アメリカ史から全人類史を射程に戯画化しようとする豪快な筆致はさすがの映像美の洪水であるが、皮肉にも、しばしストーリー…

ハンナ ~殺人兵器になった少女~

映画版のシアーシャ・ローナンと比較しても遜色ないばかりか、無垢に潜んだ動物的な凶暴性を有しては、オリジナルより新たなヒロイン像を演じてみせる──今作のハンナは、瓜二つ、サマンサ・モートンの実娘だそうだ。 「殺人兵器」というアレゴリーが成立しう…

エクスパンス −巨獣めざめる− シーズン3

途方も無いカオスに打ちひしがれるも、再び立ち上がった救世主の目を眩ませる終末のヴィジョンとは、例によってまたしても「プログラム」と「自由意志」の戦いであった。 ★2.5

エクスパンス −巨獣めざめる− シーズン2

アルマゲドンへの欲望。博士の異常な愛情。または私は如何にして心配するのを止めて“怪物”を愛するようになったか──。 サイエンス・フィクションの拡張はやがてスペキュレイティブ・フィクションとしての、内宇宙の深遠をめざす。それは複雑で単純な。母なる…

エクスパンス −巨獣めざめる− シーズン1

スペース・オペラとしてのサイエンス・フィクションの王道。その序章にサンプリングされるは、中折れ帽のハードボイルド。 まるで新鮮味のないガジェットには苦笑いすら浮かべるものの、現実にある地上のディストピアを虚構の宇宙戦争へと広げるSF的想像力の…

ウエストワールド<セカンド・シーズン>

自由という名の牢獄が人間を自由意志の不能に直面させる。生存本能と欲望の狭間に、驚くほど単純なコードで埋め込まれた性格と「物語」とその役割の中で、与えられた選択肢もまた創られた幻想に過ぎないとすれば。愛と自尊心に揺れる人間性もまた再現性の認…

フォーリング・ウォーター シーズン1

謎が謎を呼ぶ無秩序なイメージの連続。リンチ的ギミックの散りばめられた幻想は、夢の中に生きる夢見人の無意識に深く通じ合う。解かれることのない謎が夢を醒ませまいとすれば、永続する浮遊感に身も心も癒される夜の帳。明滅する電気は、ありし現実の反射…

フォーエバー ~人生の意味~

贅沢とユーモアですぎさる時間。ふと思う、そんな生活の退屈や後悔もまた一興 。誰もが山あり谷ありの冒険に満ちた人生を歩むべきだなんてことはなく、平坦な道をてくてくと歩き続ける穏やかな日々の繰り返しも悪くないものである。きっと、少し不満なくらい…

ゲーム・オブ・スローンズ 第六章: 冬の狂風

嘘偽りのない言葉を告白し、罪を贖う者たちに勝利の女神は微笑む。信じるは、善なる心が報われ、悪しき行いが罰される普遍の真理。それは神の介在しない人の道である。 大戦前夜。信義の名の元に結集する力。一気に収束を見せる物語に、炎と血に染まる“ゲー…